米エネ省、既存原子力発電所の運転継続支援プログラムで情報提供依頼書発出
21 Feb 2022
米エネルギー省(DOE)はこのほど、国内で既存の原子力発電所の運転継続を支援していくため、実施予定の「民生用原子力発電クレジット(CNC)プログラム」について、DOEの意向を通知する文書(NOI)と関連情報の提供依頼文書(RFI)を関係者に向けて発出した。
米国では現在、CO2を排出しないクリーン電力の発電量で原子力が最大シェアの52%を占めている。このため、2050年までにCO2排出量の実質ゼロ化を目指すバイデン政権は、昨年11月に成立した「超党派のインフラ投資・雇用法」の中で、CNCプログラムの実施に60億ドルの予算を充当すると約束。同プログラムを通じて、DOEは全米に立地する原子力発電所が早期閉鎖に追い込まれるのを防ぐ方針であり、CO2の排出量を抑えつつ数千名分の関係雇用を維持していくとしている。
NOIでは具体的に、原子力発電所のオーナーや運転企業、州政府や地元自治体の規制当局、同プログラムから影響を受けるコミュニティ、環境保護団体等に対し、DOEの計画を周知するとともに同計画への申請を促していく。また、RFIでは、CNCプログラムの仕組み、特に同プログラムの適用を受けるための認証プロセスや適格性の判断基準、クレジットの獲得に向けた入札の実施、クレジットの割り当て方法等について、3月初旬から中旬にかけて、意見や関連情報を募集する計画である。
DOEの発表によると、バイデン政権は現在国内で稼働する93基の商業炉について、「CO2排出量の実質ゼロ化を達成する上で極めて重要なエネルギー供給源である」と認識。電力市場の自由化やその他の経済的ファクターにより、2013年以降すでに12基の商業炉が早期閉鎖されたが、これらが電力供給していた地域ではCO2の排出量が増加し大気の質が低下、高サラリーの雇用も数千人規模で失われた。
DOEのCNCプログラムでは、原子力発電所のオーナーや運転企業がその運転の継続に向けてプログラムの適用申請を行うことになるが、これに際して申請者は、その商業炉が経済的理由により閉鎖の危機に瀕していること、その閉鎖が大気汚染物質の増加に繋がることなどを証明しなくてはならない。一方でDOE側も、その商業炉が安全に運転継続できることを原子力規制委員会(NRC)が保証しているか見極める必要がある。
DOEはまた、「有資格」と認定した商業炉に対して認定日から4年にわたり、一定の発電量に対して一定の行使価格を設定した「クレジット」を付与。クレジットの総数に基づいて支援金が支払われると見られており、DOEとしてはプログラム資金に残金がある限り、2031年9月末までクレジットを付与していく考えである。
DOEのJ.グランホルム長官は国内の原子力発電所について、「バイデン政権が掲げる地球温暖化の防止目標達成に絶対不可欠の重要電源であり、DOEは100%クリーンな電力の供給維持で原子力発電所の早期閉鎖を阻止していく」と表明。これは超党派のインフラ投資法によって可能であると述べており、「我々は既存のクリーン・エネルギー・インフラを活用してエネルギーの供給保証を強化、関係雇用を守るだけでなく次世代エネルギー技術の開発も促進できる」と強調している。
(参照資料:米エネ省の発表資料①、②、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月16日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)