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加OPG社、ダーリントンでのSMR建設でサイト準備作業開始へ

14 Mar 2022

ダーリントン原子力発電所
©Ontario Power Generation

カナダのオンタリオ州営電力(OPG)は3月10日、既存のダーリントン原子力発電所でGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製の小型モジュール炉(SMR)「BWRX-300」を建設するため、初期のサイト準備作業を開始すると発表した。

この作業に向けた第一段階として、OPGは今回、カナダの様々な産業界でEPC(設計・調達・建設)事業を多角的に展開しているE.S.フォックス社と3,200万カナダドル(約29億5,000万円)の契約を締結した。実際に準備作業を始めるには、カナダ原子力安全委員会(CNSC)等から許認可を得る必要がある。そのため、これらがOPGに発給されるのを待って、E.S.フォックス社は今年後半にも、建設サイトに通じる道路の整備やサイトに電力や水を供給するサービスなど、建設インフラの整備事業を開始する計画だ。

オンタリオ州南部のダラム地方に立地するダーリントン発電所では、2012年8月にCNSCがOPGの大型炉増設計画(当時)に対して「サイト準備許可(LTPS)」を発給した。しかし、OPG社はその後この計画を保留しており、2020年11月には「ダーリントン新設サイト」でSMRの建設に向けた活動を開始すると発表している。

取得したLTPSは有効期限が2022年8月に迫っていたため、OPGはこれに先立つ2020年6月に更新申請書をCNSCに提出。CNSCは2021年10月に同LTPSの10年延長を承認しており、同サイトは現在、カナダで唯一LTPSが認められている地点である。

2021年12月になると、OPGは同サイトで建設するSMRとして、3つの候補設計の中からGEHの「BWRX-300」を選定した。両社は現在、SMRの建設に向けた設計・エンジニアリングや計画立案、許認可手続きの実施準備等で協力中。OPGは2022年末までに建設許可をCNSCに申請し、早ければ2028年にもカナダ初の商業用SMRを完成させる方針である。

カナダでは、国内の商業炉19基のうち18基がオンタリオ州に立地しており、同州はこれらを通じて、2014年に州内の石炭火力発電所の全廃に成功している。同州はまた、出力の拡大・縮小が可能で革新的技術を用いた多目的SMRをカナダ国内全体で開発・建設するとし、2019年12月にニューブランズウィック州およびサスカチュワン州の3者で協力覚書を締結。2021年4月には、この覚書にアルバータ州も加わっている。

これらの州政府はともに、「原子力発電はCO2を出さずに安全で信頼性の高い電力を適正価格で供給できる発電技術」と認識しており、OPGは「原子力が電源構成要素に含まれなければ、地球温暖化の防止構想は目標を達成できない」と指摘。出力30万kW程度のSMRが1基あれば、その設置場所次第で温室効果ガスの排出量を年間30万トン~200万トン削減できると強調している。

今回のE.S.フォックス社との契約締結について、OPGのK.ハートウィック社長兼CEOは、「輸送その他の部門で電化が進んでいるため、オンタリオ州では電力需要の増加が見込まれている。今回の契約を通じて、当州ではクリーンで安全な電力を追加でもたらす発電設備の建設に向けて、基盤が形成される」と述べた。同CEOはまた、このような初期作業によりオンタリオ州では約100名分の雇用が新たに創出されると表明している。

(参照資料:OPGの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月11日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

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