米エネ省、先進的原子炉の廃棄物削減プロジェクトに3,600万ドル
16 Mar 2022
©ARPA-E、DOE
エネルギー省(DOE)のエネルギー高等研究計画局(ARPA-E)は3月10日、次世代の先進的原子炉から出る放射性廃棄物の発生量削減や処分の促進を目指した11件のプロジェクトに対し、合計3,600万ドルを交付すると発表した。
これらのプロジェクトは、米国で最も信頼性の高いクリーンエネルギー源の1つである原子力発電を今後一層開発・活用していくことや、廃棄物の処分促進を目的としたもの。小型のナトリウム冷却高速炉「Natrium」を開発中のテラパワー社やGE社などの民間企業、大学、研究機関等が提案中、あるいは実施しているプロジェクトである。
DOEによると、原子力は米国における総発電量の約20%、無炭素電力では約50%を賄う国内最大のクリーンエネルギー源だが、排出される廃棄物は安全に貯蔵・処分する必要がある。これを実行に移し環境等への影響を緩和することは、原子力に対する支援の強化でJ.バイデン大統領が昨年11月に成立させた「超党派のインフラ投資・雇用法」における目標の達成にも貢献。原子力を含むクリーンエネルギー全体の、平等な開発支援につながるとDOEは説明している。
今回の支援金は、ARPA-Eが2021年5月に起ち上げた「放射性廃棄物と先進的原子炉における処分システムの合理化(ONWARDS)」プログラムから拠出される。ONWARDSでは、先進的原子炉から出る使用済燃料を10分の1に削減するなどの目標を掲げており、これらの原子炉の燃料サイクルに関わる廃棄物の処分問題や貯蔵問題を解決するための技術開発を支援。今回選定されたプロジェクトは、安全で持続可能な燃料貯蔵およびクリーンエネルギーの開発を米国内で促進することになる。
11件の選定プロジェクトのうち主なものは以下の通り:
・GE社の研究開発部門であるグローバル・リサーチが実施を予定している、「再処理施設でも利用可能な核分裂性物質の計量管理システムの開発」(DOEから約450万ドル提供)。
・テラパワー社が提案する、「高温下の不安定な塩化物塩の制御が可能な、使用済燃料からのウラン抽出法開発」(855万ドル)。
・オクロ(Oklo)社が提案する、「最新の使用済燃料リサイクル施設における経済面の実行可能性研究」(400万ドル)。
・DOE傘下のアイダホ国立研究所が実施中の、「革新的でシンプルな金属燃料のリサイクル・プロセス開発」(約200万ドル)。
・ラトガーズ大学が実施を予定している、「使用済燃料を高密度で耐久性の高いセメント型廃棄物に転換するシンプルで拡張縮小可能な手法の開発」(約400万ドル)。
DOEのJ.グランホルム長官は、「放射性廃棄物の安全な管理で全く新しい手法を開発できれば、CO2を排出しない原子力発電で米国内のより多くの家庭やビジネスに電力を供給できる」と指摘。先進的原子炉設計の近代化や、クリーンエネルギー事業の強化に資する次世代技術の開発企業や大学等を支援することで、ARPA-Eはこの目標を達成していく方針だと強調している。
(参照資料:DOEの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月11日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)