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チェコ、ドコバニ原子力発電所の増設で入札開始

18 Mar 2022

チェコのP.フィアラ首相(中央・左側)とCEZ社のD.ベネシュCEO(中央・右側)©CEZ

チェコの国営電力(CEZ社)は3月17日、同国南東部で保有するドコバニ原子力発電所(51万kWのロシア型PWR=VVER×4基)でⅡ期工事の5、6号機(各120万kW級PWR)を建設するため、100%子会社のドコバニⅡ原子力発電会社(EDUⅡ)が最初の1基について、サプライヤーの競争入札を開始したと発表した。

産業貿易省が同日に入札の実施と、同計画への参加に関心を表明していた米ウェスチングハウス(WH)社とフランス電力(EDF)、および韓国水力・原子力会社(KHNP)の入札招聘を正式に承認したもの。これら3社のほかに、ロシア国営のロスアトム社と中国の中国広核集団有限公司(CGN)も参加を希望していたが、産業貿易省は事前の資格審査の実施に先立ち、これら2社を除外すると決定。残りの3社について、安全・セキュリティ面の評価を実施していた。

今回の入札で、3社は今年の11月末までに最初の入札文書をEDUⅡに提出するほか、2023年末頃までに最終明細の入札文書を提出する。CEZ社はこれらの評価報告書をとりまとめて政府に提示するとしており、2024年には選定企業と契約を締結する方針である。この頃には、完成した原子炉からの発電電力について、チェコ政府がEDUⅡと購入契約を締結する見通し。EDUⅡは2029年にも5号機の建設工事を開始し、2036年の試運転開始を目指す。

チェコ政府は2015年5月の「国家エネルギー戦略」のなかで、当時約30%だった原子力発電シェアを2040年には60%まで引き上げる必要があると明記した。同戦略のフォロー計画として翌月に閣議決定した「原子力発電に関する国家アクション計画(NAP)」では、化石燃料の発電シェアを徐々に削減するのにともない、既存のドコバニとテメリンの両原子力発電所で1基ずつ、可能であれば2基ずつ増設するための準備が必要としていた。

このため、EDUⅡが建設プロジェクトの実施準備を進めているもので、2019年9月に環境省が増設計画の包括的環境影響評価(EIA)に好意的な評価を下した後、EDUⅡは2020年3月にⅡ期工事の立地許可を原子力安全庁(SUJB)に申請した。5、6号機は既存の4基の隣接区域に建設されることになっており、将来的にこれら4基の出力を代替する予定。SUJBは翌2021年3月に、Ⅱ期工事の立地許可を発給している。

チェコ政府はこの計画について、2020年5月に1基あたり約60億ユーロ(約7,900億円)と言われる総工費の7割までを低金利で融資すると発表。CEZ社によると、この融資は今年1月に発効した「低炭素法」の下、優遇資金援助の形で実施される。

今回の入札開始についてCEZ社のD.ベネシュCEOは、「建設プロジェクトを予算の範囲内でスケジュール通りに進めるのが最優先なので、提供される原子炉の品質や契約上の利益の両面で最良の企業と契約を締結したい」と表明。契約締結後は、外国企業とのプロジェクトで生じがちな課題を最小限に食い止めるため、必要な書類の準備を慎重に進めていくと述べた。

また、入札の重要ポイントについて産業貿易省のT.エーラス副大臣は、「予算やスケジュールに合わせた作業の保証だけでなく、準備段階や建設段階の作業、および技術移転等にチェコの産業界がどれだけ関われるかも重要になる」と指摘。これらのことを通じて、チェコの原子力部門は発電所を独自に建設・運転するためのノウハウを身に着けるとしている。

(参照資料:CEZ社チェコ産業貿易省(チェコ語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月17日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

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