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カラチ3号機がパキスタンへの引き渡しに向けた試験をクリア、営業運転開始へ

20 Apr 2022

中国側で行われた仮検収書の調印式 ©CNNC

中国核工業集団公司(CNNC)は4月19日、パキスタンのカラチ原子力発電所で建設していた3号機(K-3)(PWR、110万kW)が同国への引き渡しに先立つ「受け入れ試験」に合格し、18日に仮検収書の調印式が行われたと発表した。3月初旬から試運転中だった同炉は、これをもって正式に営業運転を開始する。

同炉は、中国が知的財産権を保有する第3世代の100万kW級PWR設計「華龍一号」を採用しており、2021年5月に営業運転を開始した同型設計のカラチ2号機に次いで、中国国外で2基目の「華龍一号」となった。中国では、CNNCが「華龍一号」の実証炉プロジェクトとして2015年に着工した福清原子力発電所5、6号機(各115万kW)のうち、5号機が2021年1月に世界初の「華龍一号」として営業運転を開始。同6号機も今年初頭に国内送電網に接続されたことから、CNNCは世界で稼働する「華龍一号」は合計4基になったと強調している。

パキスタンではこのほか、CNNCが建設したチャシュマ原子力発電所1~4号機(各30万kWのPWR)が2000年以降稼働中。中国の対パキスタン協力について、CNNCは「カラチでの『華龍一号』建設プロジェクトは中国のパキスタンへの包括的な戦略協力を一層深めるものであり、両国の連携関係は新たな時代に入った」とした。「CO2排出量のピークアウトと実質ゼロ化を目指して、低炭素な電源の開発にともに取り組むだけでなく、原子力で共通の未来を分かち合うコミュニティの構築に向けた具体的な動きとなる。また、中国が推進する広域経済圏構想『一帯一路』を一層推し進めることになる」と強調した。

K-3は2016年5月に本格着工し、2021年秋には予定を前倒しして温態機能試験を完了。今年2月に初めて臨界条件を達成した後、3月4日に国内送電網に接続され、様々な出力レベルで性能試験等が行われていた。仮検収書の調印式は、中国の首都北京とパキスタン南部のアラビア海に面したカラチ市の2か所で同時開催され、パキスタン原子力委員会のA.ラザ委員長やCNNCの顧軍・総経理を始めとする幹部が双方から多数出席している。

なお、カラチ2、3号機に続く「華龍一号」としては、チャシュマ5号機をパキスタンで建設する計画がある。また、それ以外の海外案件として、アルゼンチンのアトーチャ原子力発電所3号機に同設計を採用することが決定。CNNCは今年2月、そのためのEPC(設計・調達・建設)契約をアルゼンチン国営原子力発電会社(NA-SA)と締結している。

このほか、英国の原子力規制庁(ONR)が今年2月に、「華龍一号」の英国版(UK HPR1000)について実施していた包括的設計審査(GDA)を完了。ONRが「設計承認確認書(DAC)」を、環境庁(EA)が「設計承認声明書(SoDAC)」を関係企業に発給した。「UK HPR1000」は、中国広核集団有限公司(CGN)とEDFエナジー社が英国エセックス州で共同で進める予定の、ブラッドウェルB原子力発電所建設計画に採用が決まっている。

(参照資料:CNNCの発表資料①(英語版)②(中国語版)、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの4月19日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

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