総合エネ調革新炉WG、米テラパワー社他よりヒア
19 May 2022
米国における石炭火力閉鎖の推移、および石炭火力とSMRに要する技術者数の比較例(資源エネルギー庁発表資料より引用)
総合資源エネルギー調査会の革新炉ワーキンググループ(座長=黒﨑健・京都大学複合科学研究所教授)は5月19日、2回目の会合を開催。米国テラパワー社、同ニュースケール社からの発表を受け、革新炉開発の海外動向・国際連携を中心に議論した。同WGは、「原子力発電の新たな社会的価値を再定義し、わが国の炉型開発に係る道筋を示す」ことを目指し4月20日に始動したもの。〈配布資料は こちら〉
米国エネルギー省(DOE)の原子力サプライチェーンに関する報告書によると、「米国では、今後高経年化石炭火力の多くが閉鎖され、石炭火力の設備容量を同規模の小型モジュール炉(SMR)にリプレースすることにより、既存送電線の活用および労働者の再雇用ができる」との分析結果が示されている。また、日立製作所が米国GE日立・ニュクリアエナジーと共同開発するBWR型SMR「BWRX-300」に関しては、カナダのオンタリオ州営電力(OPG)で最速2028年の運転開始を目指すプロジェクトが進んでいるが、同プロジェクトでは、製造建設段階(7年間)で約1,700人/年、運転段階(60年間)で約200人/年の雇用創出が図られる見込みだ。
テラパワー社からは、エンジニアリングディレクターのエリック・ウィリアムズ氏が小型ナトリウム冷却高速炉「Natrium」の開発状況を説明。同氏は、その立地に関し、原子炉建屋や燃料建屋などを配置する「ニュークリアアイランド」と、蒸気発生器やタービン建屋などを配置する「エネルギーアイランド」に敷地を二分した完成イメージを披露。初号機はワイオミング州で閉鎖される石炭火力の代替として建設が計画されており、ウィリアムズ氏は、建設ピーク時に2,000~2,500人、プラント稼働時に200~250人のフルタイム雇用が創出されるとの試算を示した上で、「地元のコミュニティが非常に前向きにとらえており喜ばしい」などと述べた。
また、ニュースケール社からは、共同創業者兼最高技術責任者のホセ・レイエス氏が同社の開発するPWR型のSMRについて紹介。蒸気発生器と原子炉圧力容器を一体化した小型かつシンプルな設計のモジュール炉(出力5~7.7万kW、直径4.5m、高さ23m、重さ800トン)を最大12基輸送・設置し大型炉にも遜色のない90万kW程度の出力を可能とするコンセプトに関し、同氏は、「これまでの原子炉とはまったく異なり『工場で作る』もの」と強調。さらに、外部電源や送電網の喪失時にも対応できる運転機能として、単一のモジュール起動でプラントへの給電を可能とする「ブラックスタート」や「アイランドモード」を備えるなど、レジリエンス強化も図っているとした。
日本原子力研究開発機構、三菱重工業他は2022年1月にテラパワー社と覚書を締結。ニュースケール社のプロジェクトにも昨春の日揮・IHIに続き、同年4月には国際協力銀行が出資を発表するなど、海外の革新炉開発への国内企業・機関の進出機運も高まっているが、今後の国際連携に関し、委員からは各国との価値観共有や国民理解の必要性などを訴える意見があった。地域との協働や啓発に関し、レイエス氏は、地元大学へのプラントシミュレーター提供について紹介するなど、次世代層への理解活動にも力点を置くニュースケール社の取組姿勢を強調した。
この他、今回のWG会合では、バックエンド問題の関連で、同WG上層の原子力小委員会の委員長代理を務める東京工業大学科学技術創成研究院特任教授の竹下健二氏が、同学と原子力機構との共同開発による「統合核燃料サイクルシミュレーター『NMB4.0』」について紹介。技術導入の段階ごとに2150年までに発生する使用済燃料に基づいた廃棄物処分場面積の試算結果を示した上で、革新炉の廃棄物問題について「これまで横断的に評価されてこなかった」と指摘し、WGでの議論を求めた。