原子力産業新聞

国内NEWS

総合エネ調革新炉WG、米専門家招き意見交換

01 Jul 2022

北米で展開される革新炉プロジェクト(NEI発表資料より引用)

総合資源エネルギー調査会の革新炉ワーキンググループ(座長=黒﨑健・京都大学複合原子力科学研究所教授)は7月1日の会合(オンライン開催)で、米国原子力規制委員会(NRC)原子炉規制局ディレクターのモハメド・シャムズ氏、同原子力エネルギー協会(NEI)シニアディレクターのマーク・ニコル氏を招き意見交換を行った。〈配布資料は こちら

シャムズ氏は、革新炉技術に係る許認可申請の増加に備えたNRCの取組を紹介。リスク情報などを活用した「許認可近代化」を標榜し、組織の体制強化や国際協力を図っているとした。ニコル氏は北米において計画・検討されている20件以上の革新炉プロジェクトの展望を紹介。革新炉の持つ安全性、経済性を強調するとともに、2030年までに多くのプロジェクトで運転が開始されるとの見通しを示した上で、規制の効率化、強固なサプライチェーンの確立などを課題としてあげた。

これに対し、同WG上層となる原子力小委員会の委員長を務める山口彰委員(原子力安全研究協会理事)が規制を向上させていく重要性を述べた上で、米国の革新炉開発における産業界と規制の関わり、国立研究機関の規制への関与について質問。ニコル氏は、許認可申請前の審査活動が一定のガイドラインの下で行われていることに関し、「申請の質も上がり、産業界としても歓迎している」とするとともに、「NRCはコンサルタントではない。規制の独立性は重要」と強調。シャムズ氏も「産業界とはある意味でパートナーシップだが、適切な独立性をキープする必要がある」と、同感の意を述べたほか、規制における国立研究機関の役割に関して、ガイドライン作成、設計のレビューなどを担っており「非常に重要だ」とした。

この他、WG会合では、革新炉開発におけるサプライチェーンの維持・強化に関連し、原産協会、助川電気工業、TVE(旧東亜バルブエンジニアリング)がプレゼンテーション。

原産協会からは、昨秋に154社を対象として実施したサプライチェーン調査の結果や、会員企業への海外展開支援活動の事例が紹介された。「常陽」、「もんじゅ」への電磁ポンプなどの納入実績を持つ助川電気工業は、震災を受けた原子力・エネルギー関係の売上げ減少が「転換期」となったという。同社技術の医療や自動車産業への転用例を披露した上で、再稼働が進まぬ状況下、「新たなテーマを掲げて原子力技術の活性化を」と訴えた。TVEは、バルブの主要サプライヤーとしてPWR、BWRともに多くの納入実績を持つが、新増設・リプレースによる安定的な需要が望めない見通しとともに、バルブ鋳鋼用の木型製造技術者の高齢化・後継者不足から、製造技術の維持、人材育成・技術伝承を課題としてあげた。

委員からは、職人技を適切に評価する制度設計に係る要望、大学の研究施設の老朽化が人材育成に及ぼす影響を懸念する声があがったほか、革新炉開発に向けては、規制の予見性確保、海外展開に伴う多様なニーズに対応した政府の支援策、投資計画に関連して商業化を見据えた議論の必要性などに関する意見が出された。

 

cooperation