スイスのNAGRA、深地層処分場建設サイトとして北部レゲレンを提案
14 Sep 2022
スイス北部、青色の3地点(左側から「ジュラ東部」、「北部レゲレン」および「チューリッヒ北東部」)が深地層処分場建設サイトの最終候補に残っていた。©NAGRA
スイスの放射性廃棄物処分の実施主体である放射性廃棄物管理協同組合(NAGRA)は9月12日、2008年から約14年にわたって調査した結果、あらゆるレベルの放射性廃棄物を長期間、安全に処分する深地層処分場に最良の立地点として、スイス北部のアールガウ州とチューリッヒ州を跨ぐ「北部レゲレン」エリアをスイス連邦政府に提案した。
具体的には、チューリッヒ州のハーバーシュタルに同処分場の入り口など、主な「地上施設」を建設するほか、「北部レゲレン」エリアの地下に形成されているオパリナス粘土層の岩盤で放射性廃棄物を安定的に閉じ込める計画。また、アールガウ州ビュレンリンゲン村にある「ツビラーグ集中中間貯蔵施設」の敷地内では、使用済燃料の封入施設を建設する考えだ。
NAGRAは2024年にも、これらの施設の建設に向けて「概要承認許可」をスイス連邦エネルギー庁(SFOE)に申請する方針である。申請書は、スイス連邦原子力安全検査局(ENSI)を始めとする関係当局や専門家委員会等による審査を経て、連邦参事会(内閣)と議会が可否を決定。この決定について国民投票の実施が提案された場合は、スイス国民に最終判断が委ねられる。NAGRAは深地層処分場が操業を開始するまでに、さらに30年を要すると見積もっている。
スイスでは原子力法に基づいて、高レベル放射性廃棄物(HLW)と低中レベル放射性廃棄物(L/ILW)をすべて深地層処分することになっており、NAGRAは2008年に3段階で構成される「サイト選定プログラム」を策定した。2011年11月までの第一段階で、NAGRAは6つの候補エリアを連邦政府に提案しており、2018年11月までの第二段階で、これらを「ジュラ東部」と「チューリッヒ北東部」、および「北部レゲレン」の3エリアに絞り込んだ。
これら3エリアではともに、廃棄物の定置に適しているというオパリナス粘土層の岩盤が地下に形成されているが、2018年時点で「北部レゲレン」エリアは「立地の可能性が残る予備地点」の扱いだった。しかし、その後の第三段階で、NAGRAはこれらのエリアでボーリング調査や3次元地震探査等を実施してサイト同士を比較。これらの科学的なデータから、「北部レゲレン」エリアの岩盤が地下の非常に深い位置にあり、放射性廃棄物の処分に必要な厚みや安定性があるなど、バリアとしての効果が高い最高品質であることが判明した。
ほかの2つの候補エリアと比べても、遠い将来にわたって廃棄物を最も安全に閉じ込められるとNAGRAは指摘。同エリアの地質が、最終的に処分場の建設サイトに選定される決め手になったと説明している。このような知見から、NAGRAは現時点でHLWとL/ILWの両方を処分する複合型施設の建設を「北部レゲレン」エリアで提案している。
(参照資料:NAGRAとENSIの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月12日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)