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加OPG社 ダーリントンのSMR計画で建設許可申請

07 Nov 2022

ダーリントン原子力発電所
©Ontario Power Generation

カナダ・オンタリオ州の州営電力であるオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社は10月31日、同州南部のダーリントン原子力発電所でGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製の小型モジュール炉(SMR)「BWRX-300」(出力30万kW)を建設する計画について、カナダ原子力安全委員会(CNSC)に建設許可を申請した。

申請文書はOPG社とGEH社が共同作成したもので、OPG社は今後も約6か月間にわたり複数の情報文書を順にCNSCに提出する。このプロセスの最終段階となる2024年頃、CNSCは公開ヒアリングも開催する予定。これらの手続きを経て、OPG社としては早ければ2028年にもカナダ初の商業用SMRを完成させる方針である。

折しも、カナダ連邦政府は11月2日に「2022年秋の経済声明(予算編成方針)」を発表しており、この中でクリーンエネルギーの開発投資金に課す税額を最大で30%控除すると表明。対象となるクリーンエネルギーの中には、太陽光や風力などとともに「SMRによる発電システムの機器・設備」を含めている。

ダーリントン発電所ではOPG社が2012年8月、大型炉の増設(最大4基、480万kW)用としてCNSCから「サイト準備許可(LTPS)」を取得した。大型炉の建設計画を保留にした後、同社は同じ場所でSMRを建設する計画(最大4基、120万kW)を進めており、CNSCに要請して2021年10月にこのLTPSを10年更新。同年12月には、「ダーリントン新規原子力開発プロジェクト(DNNP)」で採用する設計として、3つの候補の中からBWRX-300を選定した。

今年10月の初頭からは、同社は建設用の道路や電気・水道等の公共設備、サービス建屋など、非原子力インフラ設備の建設に向けた整地等の準備作業をサイトで開始、この作業は2025年まで継続するとしている。

カナダにおける建設許可申請書の審査プロセスでは、地元コミュニティの住民や一般国民、先住民らが申請書について幅広く議論する機会が与えられており、質問やそれぞれの利益事項を提示することも可能。CNSCの10月24日付の発表によると、OPG社が提出した「(BWRX-300の建設にともなう)環境影響声明書(EIS)」の審査報告書や「BWRX-300設計の技術パラメーター文書」などについて、一般国民が評価を行う10月24日から12月2日までの期間、CNSCは数多くの参加を促すための資金として15万カナダドル(約1,600万円)を提供する。

これは第一段階の資金提供であり、第二段階の資金提供についてCNSCは後日発表すると表明。審査プロセスの残りの部分に参加する一般国民のために活用するとしており、具体的には、CNSC委員が作成した文書やOPG社の建設許可申請関係文書の評価作業、公開ヒアリングへの参加を促すために用いるとしている。

なお、この建設プロジェクトに対しては、連邦政府のカナダ・インフラストラクチャー銀行(CIB)が10月25日に、9億7,000万加ドル(約1,056億円)という過去最大規模の投資を約束している。

(参照資料:OPG社CNSCの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月2日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

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