原子力産業新聞

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韓国NGOが福島第一を視察 ALPS処理水の正しい情報発信に向け

26 Dec 2022

ALPS施設を視察する韓国NGO一行(東京電力の資料より引用)

韓国のNGO団体「The Fact and Science」が12月13日、福島第一原子力発電所を訪れ、廃炉作業の進捗やALPS処理水[1]トリチウム以外の核種について環境放出の規制基準を満たす水の放出に向けた準備状況などを視察した。〈東京電力の資料は こちら

同団体は、「事実と科学に基づく合理的な問題解決を通じた先進的な社会構築」を目指し、2018年に韓国内で設立されたネットワーク。前政権の脱原子力政策に対し、新聞広告、署名活動、セミナー開催、SNSなどを通じ、原子力や放射能に関する正しい情報発信を求めてきた。韓国の前政権による「福島第一原子力発電所の敷地に保管された汚染処理水は放出してはならない危険物質」という主張は、まだ多くの韓国人の脳裏に強く残っている。そのため、処理水がどのように管理されているか直接確認し、正確な情報を韓国政府、国会議員、韓国国民に伝えることを目的に、同団体ディレクターのパク・ギチョル氏(元韓国水力・原子力会社〈KHNP〉副社長)ら7名が福島第一原子力発電所を訪れた。

一行は、1~4号機全景の他、原子炉建屋内の冷却に伴い発生する汚染水を浄化処理する多核種除去設備(ALPS)、ALPS処理水の海洋放出に係る設備の建設現場、測定・確認用タンクエリア、環境モニタリングの一環として行う海洋生物飼育試験の施設などを視察。視察後、「ALPS処理水の海洋放出については、まずは地元の方々の理解を得なければならない。大変なことだが、信頼を得られるよう願っている」とコメント。

同NGOでは、今回の福島第一原子力発電所訪問に関する出版物を検討中とのこと。現場を訪れた所感として、「数千人もの人員が復旧のために黙々と働く姿はとても感動的だった」と述べた。ALPSで取り除くことのできないトリチウムに関し、韓国他、多くの国の原子力施設で排出されている事実に触れた上で、「韓国では海洋放出に反対する人々がまだ大勢いる。福島第一原子力発電所に対する歪んだ情報を正し、事実と科学に基づき原子力発電と放射能に対する誤解と恐怖を払拭していきたい」と意気込みを語った。

脚注

脚注
1 トリチウム以外の核種について環境放出の規制基準を満たす水

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