原子力産業新聞

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原子力学会 次世代炉開発に関する活動を強化

08 Feb 2023

黒﨑健氏©京都大学

日本原子力学会では、政府の「GX(グリーントランスフォーメーション)実行会議」における原子力政策検討の動きをとらえ、次世代革新炉の開発・建設に関する専門的議論や報道関係者との対話を強化している。

同学会の社会・環境部会では1月13日、総合資源エネルギー調査会の革新炉ワーキンググループで座長を務めている黒﨑健氏(京都大学複合原子力科学研究所教授)を招き、マスメディアとの交流会を開催し意見交換を行った。

黒﨑氏はまず、昨今の原子力開発を巡る国際動向を俯瞰。中国・ロシアにおける躍進ぶりをあげる一方、日本については、福島第一原子力発電所事故以降、新規建設の具体的プロジェクトが途絶したことによる「技術力の低下」を第一の問題点として指摘した。サプライチェーン脆弱化の課題にも触れ、同氏は、次世代革新炉開発検討の背景として、発電以外の利用も含めた「原子力の新しい価値の創造」を強調。2022年10~12月に開催された革新炉WG会合の議論について紹介した上で、次世代革新炉の開発・建設に係わる事業実現に向けて、「ニーズがありユーザーが現れること」を前提に、採算の見通し、規制の確立の必要性を指摘した。

黒﨑氏は、その中で特に、採算見通しのための仕組みとして、EUタクソノミー[1] … Continue reading、英国のRABモデル[2]規制当局が認可した投資を規制料金を通じて回収する仕組みで、英国では下水道や空港建設で実績があるなどを例示。「脱炭素の取組に原子力を盛り込むことが一つのポイントとなる」と述べた。

昨年末に総合資源エネルギー調査会の原子力小委員会が取りまとめた「今後の原子力政策の方向性と実現に向けたアクションプラン」(案)では、次世代革新炉の開発・建設に向けた方針として、「廃止決定した炉の次世代革新炉への建て替え」と記載されている。こうしたリプレースの考え方に関して、黒﨑氏は、使用済燃料中間貯蔵施設の地元受入れも難航している現状に触れ、「立地問題は非常に重要だが、まだ突っ込んだ議論がされている段階ではない」などとした。また、高速炉に関しては、燃料に係る専門的立場から廃棄物の有害度低減技術を実用化する困難さを指摘。さらに、技術継承の視点からも「今がスタートするギリギリの時。後5年経過すると無理ではないか」と繰り返し強調し、次世代革新炉開発全般を通じ人材確保への危機感をあらわにした。

原子力学会の原子力安全部会では昨秋、次世代革新炉の規制に関するセミナーも開催している。

脚注

脚注
1 持続可能な経済活動を明示し、その活動が満たすべき条件をEU共通の規則として定めるもので、2022年2月に原子力を含めることに関する規則が採択された
2 規制当局が認可した投資を規制料金を通じて回収する仕組みで、英国では下水道や空港建設で実績がある

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