英ロールス・ロイスSMR社製のSMRを建設へ ポーランド
10 Feb 2023
MOIの調印式 ©Rolls-Royce SMR
ポーランド国営の産業開発会社(ARP)に所属する産業グループ「インダストリア(Indsutria)」は2月8日、低炭素な電力を用いたエネルギー・プロジェクトの実施に向け建設する小型モジュール炉(SMR)として英ロールス・ロイスSMR社製のSMRを選定した。
同日に交わした協力のための趣意書(MOI)に基づき、両社は今後、最大3基のSMRを建設して、ポーランド南部地方のエネルギーインフラの脱炭素化と、低炭素な製造方法による水素を年間5万トン製造することを目指す。また、2030年代に同地方で合計出力800万kWの石炭火力発電所をSMRで代替する可能性を探り、ロールス・ロイスSMR社製SMRのパーツやモジュールを製造するサプライチェーンも、同地方で構築する方針である。
インダストリアはポーランド南部地方シフェントクシシュ県の産業グループで、2021年11月に同県で設立された水素製造クラスターを主導してきた。同じ月にポーランド政府の閣僚会議で「ポーランドにおける2030年までの水素戦略」が採択され、同国全土の地方自治体や企業が新たに水素製造に参入してきたことから、「シフェントクシシュ水素製造クラスター」は2022年7月に名称を「中央水素製造クラスター」に変更。CO2を排出しない電源で水素を製造し、複数の関係企業が連携し合うエコシステムを構築する考えだ。
ARPのC.レシス社長はロールス・ロイスSMR社との協力について、「シフェントクシシュ県や当社の傘下企業にとって、SMR用ハイテク産業の基盤を築く大きなチャンスになる」と指摘。「産業界がSMR等により新たな能力を獲得することに積極的なのは、ポーランドがエネルギー供給保証の強化とクリーン・エネルギー経済に向かっていることの表れだ」と述べた。
ロールス・ロイスSMR社のT.サムソンCEOは、「SMRを使ってポーランドのエネルギー多消費産業の脱炭素化を進め、後世のためのクリーン電力発電計画をインダストリアと共同で策定していく」と表明。出力47万kWの同社製SMRは工場で製造可能であり、クリーン電力を安価で供給できることから、ポーランドは戦略的に重要な国際市場の一つだと述べた。また、「今回の連携協力を通じて、ポーランドと英国では数千人規模の長期雇用がサプライチェーンで確保されるなど、経済的に大きな可能性を秘めている」と強調した。
ポーランドではこのほか、政府が大型原子炉の導入計画として、2022年11月に最初の3基、375万kW分に米ウェスチングハウス(WH)社製AP1000を採用すると決定。国営エネルギー・グループ(PGE)の原子力事業会社PEJ社が翌12月、細かな取り決め条件でWH社と合意している。
小型炉関係では、化学素材メーカーのシントス社が2021年12月、石油化学企業のPKNオーレン社と合弁事業体を設立し、米GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製SMR「BWRX-300」の建設計画を進めている。また、鉱業大手のKGHMポーランド採掘会社は2022年2月、米ニュースケール・パワー社のSMRを複数備えた「VOYGR」発電設備を2029年までに国内で建設するため、先行作業契約を締結した。リスペクト・エナジー(Respect Energy)社も今年1月、とフランス電力(EDF)らが開発しているSMR「NUWARD」のポーランド国内での共同建設に向け、協力協定を締結している。
(参照資料:ロールス・ロイスSMR社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月9日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)