原子力産業新聞

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原子力委 基本的考え方の改定案をまとめる

15 Feb 2023

原子力委員会は2月14日、「原子力利用に関する基本的考え方」の改定案を取りまとめた。2017年の策定から5年ぶり。国に対し「総合的な視点に立ち、原子力エネルギーの利用のために必要な措置を講ずるべき」と提言している。

同委による基本的考え方は2017年、「今後の原子力政策について政府として長期的な方向性を示唆する羅針盤となるもの」として閣議決定。5年を目途に見直すこととされており、2022年の初頭より、関係行政機関や有識者からのヒアリングなどを実施し、改定に向けて検討を進めてきた。改定案については、昨年末より1か月間のパブリックコメントを実施し、14日の定例会合で寄せられた意見を集約。近く原子力委員会として成案を正式決定し、閣議決定となる見通し。

今回の改定案では、前回策定からの情勢変化として、カーボンニュートラルに向けた世界的な動きの加速化、電力安定供給を巡る状況変化、ロシアによるウクライナ侵攻に伴う地政学リスクの深刻化、エネルギー安全保障に係る懸念を列記。加えて、原子力の積極的活用を表明する海外の動き、既存の原子力発電所の運転延長、新たな安全メカニズムを組み込んだ革新炉の新設などから、原子力利用に対し注目が集まっていることも述べている。

その上で、「原子力利用の基本目標およびその重点的取組」(計9項目)として、「エネルギー安定供給やカーボンニュートラルに資する安全な原子力エネルギー利用を目指す」ことをあげた。先般、脱炭素、エネルギー安定供給、経済成長の同時実現に向け閣議決定された「GX実現に向けた基本方針」の中で「原子力の活用」として示された運転期間の延長については、「『運転期間は40年、延長を認める期間は20年』との制限を設けた上で、原子力規制委員会による厳格な安全審査が行われることを前提に、一定の停止期間に限り、追加的な延長を認めることとすべき」と明記。また、革新炉の開発・建設に向けた取組としては、革新軽水炉について、「他の革新炉よりも技術的に成熟し、既存の軽水炉の経験が活かしやすいため、比較的早い段階での市場展開が見込める」と期待。今後の革新炉導入に向けては、新たな安全技術の実証、投資に向けた事業環境整備、炉型を踏まえた適切な段階での規制整備、国内サプライチェーンの維持・強化などの課題を指摘している。

この他、重点的取組としてあげた「放射線・ラジオアイソトープの利用の展開」の中で、医療用RIの国産化、核医学治療の普及に向け、2022年5月に原子力委員会が策定したアクションプランにも言及し、関係省庁、研究機関・大学、企業などが連携して取り組む必要性を強調。「原子力利用の基盤となる人材育成の強化」では、原子力分野のジェンダーバランス改善、原子力・放射線に係る次世代教育の充実化の重要性も述べている。

*理事長メッセージ(2022年6月7日に行われたヒアリングでの発言内容)は こちら をご覧ください。

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