エネ庁 将来世代への理解に向け地層処分シンポ
17 Feb 2023
パネルディスカッションの模様(左より、野波氏、トリンドルさん、大空さん氏、中野さん)
資源エネルギー庁は2月10日、高レベル放射性廃棄物の処分地選定を巡る取組について考えるシンポジウム「わたしたちの子どものための街づくり~地層処分問題と共創する未来~」を都内で開催。石川和男氏(政策アナリスト)による進行のもと、野波寛氏(関西大学社会学部教授)の他、この問題に関心を持つ若手として、トリンドル玲奈さん(モデル・女優)、大空幸星さん(NPO法人あなたのいばしょ理事長)、中野愛理さん(ミライブプロジェクト代表、武蔵野大学〈学生〉)が登壇しパネルディスカッションに臨んだ。
冒頭、挨拶に立った西村康稔経済産業相は、最終処分について、「原子力発電所から発生した使用済燃料が既に存在する以上、世界的に解決しなければならない共通の課題」との認識を改めて示した。処分地選定に向けた文献調査が北海道の寿都町・神恵内村のみで行われていることに関し、「NIMBY」(Not in My Back Yard、必要なのはわかるが自分の家の裏庭には作らないで欲しい)の意識が根底にあることに触れ、「決して特定の地域の問題にしてはならない」と、全国レベルで考える必要性を強調。折しも、同日、最終処分関係閣僚会議で、高レベル放射性廃棄物などの最終処分に係る基本方針の改定案が取りまとめられたが、西村経産相は、「文献調査の実施地域を全国に拡大していくことが大事」と、引き続き取組を強化していく考えを述べた。
ディスカッションに先立ち寿都町の片岡春雄町長、神恵内村の高橋昌幸村長が基調講演。両首長とも、人口減少に伴う地域の将来に対する不安から文献調査応募に至った経緯を説明。その上で、それぞれ、「文献調査に応募する第3、第4の自治体が1日も早く出てくることを期待」、「身近な問題としてとらえ、多くの方々が正しい情報を共有し発信してもらいたい」と述べ、地層処分問題に関し、特に若い世代の関心が高まることを期待した。
続いて、「あなたの住む街に処分場が来たらどうする?」をテーマにパネルディスカッション。高レベル放射性廃棄物問題の認知度の低さに関して、エネルギー問題などをテーマに全国の学生と交流を行っている中野さんは「地層処分についてもともと知っていたという人は本当に少ない」と強調。虐待・DVなどに係る支援活動に取り組む大空氏も「『気候変動問題に何かアクションを取ろう』と考えている層にも届いていない」と、社会問題の中でも殊に関心が低いことを述べ、まず若手を中心に無関心層から訴えかけ話し合ってもらう必要性を指摘。また、長期にわたる処分事業に係るイデオロギーの問題に関して、野波氏は社会学の立場から、「『遠くにいて見えない被害者がいる』ことに気付かない典型」などと述べ、学校の道徳教科書でも取り上げ理解を深めることを提案。石川氏がこうした「次の世代にツケが回される問題」について問うと、大空氏は「今作られた橋や道路は100年後には直す必要が生じている」などと、社会構造上、高レベル放射性廃棄物に特化するものではないことを指摘した。
六ヶ所村や柏崎市・刈羽村他への訪問経験から、中野さんは、原子力関連施設を立地する地域の想いに関して、「自分たちの手でまちづくりを行う姿に感銘を受けた」などと所感を述べた。福島の復興イベントにも参加してきたトリンドルさんは、「まずは知ってもらうことが大事」と強調。さらに、意思決定のプロセスに関して、「自分が不安に思うことを表に出さないようにしているのでは」との懸念を示し、「色々な立場・世代を越え対話することが必要」と、幅広いコミュニケーションの重要性を訴えかけた。
※写真は、いずれもオンライン中継より撮影。