米貿易開発庁 インドネシアのSMR建設計画を支援
22 Mar 2023
両者間の合意文書署名式 ©USTDA
米国政府で海外援助を担当する貿易開発庁(USTDA)は3月20日、インドネシアで米国製小型モジュール炉(SMR)の建設を支援するため、同国の国有電力会社であるインドネシア・パワー社に技術支援金を提供すると発表した。
インドネシアがクリーン・エネルギー経済に移行する際の一助となるよう、インドネシア・パワー社は西カリマンタン州で建設する同国初のSMRとして、米ニュースケール・パワー社の「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」を選定。同社はUSTDAの支援金を使って、ニュースケール社に出資するEPC(設計・調達・建設)サービス企業の米フルアー社や日揮とともに、ニュースケール社が提案する出力46.2万kWのSMR発電設備「VOYGR-6」(出力7.7万kWのNPM×6基)の建設について、技術面や経済面の実行可能性を評価する。
具体的な作業としては、詳細なサイト選定計画の策定や送電網に接続するシステムとSMR発電所の設計、環境や社会に対する影響の予備的評価、リスク評価、コスト見積もり、規制体制の見直し等を実施する。
USTDAの今回の決定は、バリ島で開催されていた「インド太平洋ビジネス対話」にともない発表された。インドネシアが現在、エネルギー供給を確保しつつ温室効果ガスの排出量を抑える目的でSMRの建設を検討していることから、米国は同国の原子力によるクリーン・エネルギー・プログラムの策定をサポートするため、同国と戦略的パートナーシップを締結している。
両国政府が交わしたこのような合意覚書や支援金の交付決定は、G7諸国が発展途上国のインフラ・プロジェクトに資金提供するため設置した「グローバル・インフラと投資のためのパートナーシップ(PGⅡ)」の成果。この合意により、昨年11月に米国や日本がクリーン・エネルギーへの移行に向けたインドネシアの取り組みを支援するため、同国で立ち上げた、「公正なエネルギー移行パートナーシップ(インドネシアJETP)」の目標達成を目指すことになる。
米国政府はまた、国務省(DOS)が2021年4月に開始した「SMR技術の責任ある利用のための基盤(FIRST)」プログラムの下、両国間のこれまでの連携協力に基づきインドネシアで新規電源を建設するための支援金として、米国側から新たに100万ドルを交付すると決定。SMR分野の人材育成や許認可、規制関係の支援を提供することになる。
これらを通じて、米国はASEAN諸国における安全・確実かつ先進的な原子炉の建設でインドネシアの主導的立場が強化されるよう協力し、2060年までに同国が目指しているCO2排出量の実質ゼロ化をサポートしていく考えだ。
インドネシア・パワー社のE.N.プトラ社長は、「長い年月を経て我が国は今こそCO2を排出しないエネルギーで自給自足を達成する」と表明。「SMR建設に向けたUSTDAの技術支援協力を通じて、当社は国立研究革新庁(BRIN)や経済担当調整省、ニュースケール社とともに原子力発電による新たな時代への扉を開けた」と述べた。
USTDAのE.T.エボン長官は、「クリーン・エネルギーへの移行に際しインドネシアは米国との協力を強く望み、目標達成の手段として米国の画期的な技術を選択した」と指摘。インドネシアで最も意欲的かつ注目すべきインフラの建設プロジェクトを進めるため、USTDAは唯一無二の役割を果たしていくと表明している。
インドネシアでは電力需給のひっ迫等を理由に、1980年代に原子力発電の導入が検討されたが、建設予定地における火山の噴火や地震の可能性、福島第一原子力発電所事故などが影響し、100万kW級大型炉の導入計画はこれまで進展していない。一方、初期投資の小ささや電力網への影響軽減等の観点から、中小型炉への関心は維持されており、インドネシア原子力庁(BATAN)は2018年3月、大型炉導入の前段階として小型高温ガス炉(HTGR)を商業用に導入するため、熱出力1万kWの実証試験炉の詳細工学設計を開始している。
(参照資料:USTDA、在インドネシア米国大使館の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月20日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)