ポーランドの銅採掘企業 ニュースケール社製SMRでDIP申請
26 Apr 2023
ニュースケール社がKGHM社に提供するSMRモデル ©KGHM
ポーランドの鉱業大手KGHM銅採掘会社(KGHM社)は4月14日、米ニュースケール・パワー社製小型モジュール炉(SMR)の国内建設に向け、この計画に対する「原則決定(decision-in-principle=DIP)」の発給を気候環境省に申請した。
「DIP」の発給は、その投資計画がポーランド社会全体の利益につながるとともに、国家政策にも則していると政府が確認し、正式承認したことを意味している。事業者がそれ以降、立地点の決定や建設許可など様々な行政承認を申請していく上で必要な大枠の手続きとなる。
この前日には、ポーランド国営エネルギー・グループ(PGE)の原子力事業会社であるPEJ社(=Polskie Elektrownie Jądrowe)も、北部ポモージェ県における同国初の大型原子炉建設に向けて「DIP」の発給を気候環境省に申請した。
政府が株式の約4割を保有するKGHM社は、ポーランド南西部にある欧州最大規模の銅鉱床で採掘を行っており、持続可能な開発というコンセプトに沿った活動も展開中。2050年までに同社が排出するCO2の実質ゼロ化を目指しており、事業に必要な電力や熱エネルギーの約半分を2030年までに自社で賄うため、SMRや再生可能エネルギー源の設置プロジェクトを進めている。
ニュースケール社が開発した「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」はPWRタイプの一体型SMRで、電気出力が5万kW~7.7万kWのモジュールを最大12基連結することで出力の調整が可能である。米国の原子力規制委員会(NRC)は2020年9月、モジュール1基の出力が5万kWの「NPM」に対し、SMRとしては初めて「標準設計承認(SDA)」を発給。ニュースケール社は7.7万kW版のモジュールについても、2023年1月にSDAを申請している。
2022年2月にKGHM社は、7.7万kW版の「NPM」を複数基備えた発電設備「VOYGR」の建設に向けて、ニュースケール社と先行作業契約を締結した。早ければ2029年にも同プラントを完成させる計画で、2022年7月には5万kW版の「NPM」について、国家原子力機関(PAA)に事前の安全評価を要請。これは原子力法に規定された予備的な許認可手続きの一つであり、PAA長官は約9か月かけて見解を取りまとめる。
政府の出資企業が国のクリーンエネルギーへの移行に参画することは、J.サシン副首相兼国有資産相も奨励しており、「原子力は安全でクリーンかつ安価なエネルギー源であり、ポーランドのさらなる発展に寄与する」と明言。国内企業がポーランドのエネルギー供給保証に関われば、より効率的に国を強化できると指摘した。
KGHM社のT.ズジコット社長はSMRを建設する理由として、「当社は国内最大規模の企業であると同時に、最大のエネルギー消費企業でもある」と説明。同社は最重要プロジェクトと位置付けるSMRの建設を通じて、今後の企業運営を安定化する方針であり、原子力も含めた同社のクリーンエネルギーへの移行は、ポーランド全体のエネルギー・ミックスの重要な柱になるとしている。
(参照資料:KGHM社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの4月18日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)