加アルバータ州 SMR建設に向けKAERIと協力覚書
01 May 2023
署名済みの覚書を提示するKAERIのジュ院長 ©KAERI
カナダのアルバータ州政府と韓国原子力研究院(KAERI)はこのほど、KAERIが設計した小型モジュール炉(SMR)「SMART」など韓国製SMRの同州内での建設に向けて、包括的な協力の枠組となる了解覚書を締結した。
同州は天然資源が豊富なカナダの中でも特に、石油や天然ガスなどの資源に恵まれており、今後はSMRが生み出す無炭素な電力や熱を活用して、オイルサンドからの燃料抽出や化学製品の製造、鉱業、海水脱塩など、州内の様々な産業を脱炭素化していく。
「SMART」炉以外のSMRについても、アルバータ州はすでに導入に向けた覚書を内外の複数企業と締結済み。それらは主に第4世代の先進的SMRで、テレストリアル・エナジー社が開発した小型モジュール式・一体型溶融塩炉(IMSR)や、米X-エナジー社の小型ペブルベッド型高温ガス炉「Xe-100」、米ARCクリーン・テクノロジー社のナトリウム冷却・プール型高速中性子炉「ARC-100」などである。
今回の覚書に関しては、アルバータ州のB.ジーン雇用・経済・北部開発相とR.ソーニー貿易・移民・多文化主義相が4月18日(カナダ時間)、KAERIのジュ・ハンギュ院長とオンラインで署名した。今後は、同州内でSMR建設の可能性を見極めるため、連邦政府と州政府が適用する規制要件や産業界の関係プログラムなどに集中し、共同で取り組む。
アルバータ州は2021年4月、カナダのオンタリオ州とニューブランズウィック州、およびサスカチュワン州が2019年12月に締結した「多目的SMR開発・建設のための協力覚書」に参加。2022年3月には、これら4州でSMRの開発と建設に向けた「共同戦略計画」を策定しており、アルバータ州の当時の首相は、同年8月からこの戦略計画に基づく活動を開始している。
アルバータ州政府の発表によると、KAERIとの今回の覚書締結は、その後両者がSMRなどクリーンエネルギー関係の協力について重ねた協議に基づいている。今年3月には、ジーン雇用・経済・北部開発相とソーニー貿易・移民・多文化主義相を含む州政府の貿易使節団が韓国を訪問し、韓国政府と傘下のエネルギー機関、エンジニアリング関係のトップ企業の代表者らと会談。KAERIの研究施設も視察している。
「SMART」炉は海水脱塩と熱電併給が可能なシステム一体型モジュラーPWRで、熱出力と電気出力はそれぞれ、33万kWと10万kW。同炉の建設についてはサウジアラビアが検討中で、同国と韓国の両政府は2015年に同炉の建設前設計協力契約を締結した。2023年1月に両国はこの協定を改定し、同設計でサウジアラビアの標準設計認可を取得するため、新たに共同推進協約を締結している。
KAERIのジュ院長は、「CO2排出量の実質ゼロ化という目標を今こそ実行すべきであり、SMRはそのための重要技術だ」とコメント。アルバータ州で「SMART」炉を建設すれば、地球温暖化との闘いで先駆者的役割を果たすと強調している。
(参照資料:アルバータ州政府、KAERIの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの4月20日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)