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欧エンジ企業3社 EDFの原子力プロジェクト支援で新会社設立

23 Jun 2023

NUCEAL社の設立記念式。中央がパニエ=リュナシェ大臣 ©Assystem

フランスのアシステム(Assystem)社とスペインのイドム(IDOM)社、およびスロバキアの原子力研究所(VUJE)は621日、フランス電力(EDF)が欧州や英国で実施する原子力プロジェクトを支援するため、エンジニアリング合弁事業体「原子力エンジニアリング・アライアンス(NUClear Engineering ALlianceNUCEAL)社」を設立した。出資比率はアシステム社が60%、残り2社が20%ずつとなっている。

アシステム社はフランスを拠点とする国際的な原子力エンジニアリング企業で、12か国で6,500名の専門スタッフがクリーン・エネルギーへの移行を支援。イドム社は125か国のプロジェクト開発事業に携わった従業員所有企業で、原子力サービスや発電、インフラ、コンサルティング等の分野で実績がある。VUJE1977年にスロバキア国有の原子力研究機関として発足したが、1994年に組織改革が行われ、現在は従業員が株式を保有する民間合資会社となっている。

これら3社は欧州全体で12,000名以上の従業員を抱え、原子力関係で強力な知識基盤を構築している。これらを背景にNUCEAL社は今後、欧州加圧水型炉(EPR)の改良版「EPR2」や、出力を120kWに縮小した「EPR1200」、小型モジュール炉(SMR)の「NUWARD」など、EDFが欧州で実施中、あるいは実施を予定している様々な原子力プロジェクトに支援参加を提案。EDFの原子力サービスに3社の技術と専門的知見を活かし、あらゆる地域に専門チームを派遣する方針だ。

3社の調べによると、EDFはフランスと英国で大型炉の建設プロジェクトを進めており、ポーランドやチェコ、オランダ等の欧州諸国でもこれらを建設する可能性がある。このようなプロジェクトを実行するには、その国のペースと規模に合せた資源や専門能力など、エンジニアリング上の強力なサポートが必要。また、「NUWARD」のように、いくつかの国で関心が高まりつつある先進的原子炉を建設する場合、EDFはその国独自の規制要件への適応態勢や、地元企業も含めた欧州サプライチェーンを構築しなければならない。

今回設立した合弁事業体では、3社それぞれの強みが生かされる予定で、アシステム社は複雑なプロジェクトの実施に際し、デジタル方式を用いた効率的な運営が可能である。イドム社は原子力発電所の設計から廃止までのプロセス全般や発電事業について、豊富な経験と能力を保有。VUJEは中・東欧地域の原子力発電所建設で経験を積んだ技術専門家のチームや、送・配電関係のエンジニアリング能力を有している。

フランスのリヨンで執り行われたNUCEAL社の設立記念式には、同国のA.パニエ=リュナシェ・エネルギー移行相が同席した。

アシステム社のT.ブランシュ上級副社長は、「EDFが欧州でこれまでに携わってきた数多くの原子力プロジェクトの成功条件は、盤石なサプライチェーンを利用できたことだ」と指摘。NUCEAL社の立ち上げはこのようなプロジェクトを成功に導く重要な柱であり、クリーン・エネルギーへの移行を加速するとした。また、同社のように強力なエンジニアリング企業連合が参加することで、これから原子力を導入する国々では、発電所をスケジュール通り予算内で建設できるようになると強調している。

(参照資料:イドム社VUJEアシステム社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNA621日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

 

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