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英国 深地層処分候補4地点の適性評価を開始

30 Jun 2023

GDF報告書 ©NWS

英国の放射性廃棄物処分の実施主体である原子力廃棄物サービシス(NWS)は629日、高レベル放射性廃棄物(HLW)の深地層処分施設(GDF)建設プログラムの現状報告書の中で、イングランドの4つの候補サイトでサイトの適性評価を開始すると発表した。幅広い評価作業結果を分析した上で、最終判断を下す方針である。

NWSは原子力廃止措置機構(NDA)の傘下機関で、放射性廃棄物の処分事業を担当していた放射性廃棄物管理会社(RWM)や低レベル放射性廃棄物処分会社(LLWR)の知見を統合し、20221月に設立された。

今回のGDF建設報告書は、今年3月末時点の進展状況をまとめたもので、これによると、これまでにイングランド北西部カンブリア州のコープランド市中央部と同市南部、アラデール市に加え、東部リンカンシャー州のテッドルソープでも、この問題について実施主体のNWSとの対話や地元住民の理解促進活動を行う「コミュニティ・パートナーシップ」が設立されている。このため、NWSは差し当たりこれら4つのパートナーシップとの協議を重ね、放射性廃棄物を安全かつ恒久的管理が可能かを評価。今後新たなパートナーシップがGDFサイトの選定プロセスに加わる可能性も視野に入れて、NWSは主要な許認可の取得等、同プログラムを次の段階に進める準備作業を進めていく考えだ。

英国では2008年から2009年にかけて、カンブリア州の2つの自治体がGDF受け入れに関心を表明したものの、州政府の反対を受けて建設サイトの選定プロセスは2013年に白紙に戻った。英国政府は201812月に策定した新たな政策に基づき、改めてGDFサイトの選定プロセスを開始している。

それは地元コミュニティとのパートナーシップに基づく合意ベースのアプローチで、まずGDFの受け入れに関心をもつ個人や団体、企業がNWSとともに作業グループ(WG)を立ち上げ、NWSとの初期協議を開始、GDF建設の潜在的適性があると思われる「調査エリア」を特定する。この検討段階では地元自治体がWGに参加する必要性はないが、特定された「調査エリア」で適性評価を始めるには、同エリアに関係する地方自治体が少なくとも1つ参加する「コミュニティ・パートナーシップ」の設立が必須となる。

同パートナーシップでは、構成員が共同作業をする際の原則やそれぞれの役割、責任事項などを定めた協定を締結。英国政府はパートナーシップを構成するコミュニティに対して、経済振興や福祉の向上を目的としたプロジェクトに限り年間最大100万ポンド(約18,000万円)を提供するほか、サイト選定プロセスが深地層のボーリング調査段階まで進んだコミュニティには、年間最大250万ポンド(約46,000万円)を交付する奨励策を打ち出している。

このアプローチではまた、担当の国務大臣がGDF建設に合意する判断を下す前に、地元自治体はGDF受け入れの意思があることを証明するため、住民投票その他の方法でテストを実施。その実施時期を決める権利やサイト選定プロセスから撤退する権利は、各「コミュニティ・パートナーシップ」を構成する主要自治体の保有となるが、複数の自治体が参加している場合はすべての自治体の合意が必要になる。

NWSは今回の報告書で、4つの「コミュニティ・パートナーシップ」が形成されたことから、これらのコミュニティと一層深く関わり合い、情報共有するための基盤が築かれたと表明。また、「コミュニティ投資ファンド」の中から、これらのコミュニティの若者向け制度や精神保健イニシアチブなど、約80のプロジェクトに300万ポンド(約55,000万円)が支給されており、サイト選定プロセスの参加コミュニティには明らかなメリットがあるとした。さらにサイトの適性評価を、すでに行われているその他の調査と同時に進める方針で、コープランド市の沖合で昨年8月に行われた海洋の地球物理学的調査の結果は、今年後半にも共有が開始されるとしている。

NWSの印象では、GDF建設プログラムは4つの「コミュニティ・パートナーシップ」とGDF建設の可能性に関する対話や質疑応答、情報共有が行われるなど、目覚ましい進展を見せている。目標達成まで長期を要するプログラムだが、将来世代に対する責任を明確に負っているため、初期的な作業は順調に進んでいる。英国政府は、グリーンなエネルギーミックスの構築や確実なエネルギー供給保障で、原子力が重要な役割を担うと認識しており、過去数十年にわたった放射性廃棄物の管理を今後も継続する。それには、放射性廃棄物を安全に管理する能力がこれからも重要になると指摘している。

(参照資料:英国政府の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNA628日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

 

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