原子力産業新聞

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「フォーラム・エネルギーを考える」が暮らしの視点でパンフ

04 Jul 2023

7月に入り、資源エネルギー庁では、東京エリアに8月末までの2か月間、需要対策として「無理のない範囲での節電の協力」を呼びかけるなど、電力需給見通しは依然と予断を許さぬ状況にある。こうした中、「みんなで一緒に考える」を理念に生活者の視点で活動する「フォーラム・エネルギーを考える」(神津カンナ代表)は、パンフレット「暮らしの中のエネルギー 2023を制作し、エネルギー問題に関する知識の普及・啓発に努めている。

パンフレットは、「地球環境問題」、「世界のエネルギー事情」、「日本のエネルギー事情」の3部構成。グラフ・図表を中心としたわかりやすさが特長で、教育現場での活用も期待できそうだ。

パンフレットの大半を占める「日本のエネルギー事情」では、まず、日本における2050年までの年齢別人口の将来推計などから、少子高齢化時代到来の実態を示している。その上で、「1世帯当たりの人員が減り続ける一方、世帯数は年々増えている。世帯数が増えると電気製品や自家用車などが増え、エネルギー消費量も増加する」と説明。さらに、1975年度以降のデータから、産業部門のエネルギー消費は横ばいなのに対し、民生部門(家庭など)や運輸部門では増加傾向にあることを示し、「暮らしとエネルギー」について問題提起。例えば、家庭のエアコン普及率は1980年度の約40%が2020年度には約96%に、パソコンの普及率は1986年度の約15%が約79%に急増し、「省エネ技術は進むが、大型化・多機能化で消費電力は増加傾向」と指摘している。

省エネについては、1970~90年の大幅なエネルギー消費効率(最終エネルギー消費/実質GDP)の改善実績を図示。実質GDP当たりの一次エネルギー消費量は世界平均の約4割(2019年)で、世界の中でも「省エネ先進国」といわれるまでになったものの、1人当たりのエネルギー消費量は世界平均の約1.7倍(2020年)と依然として多いことから、「引き続きエネルギー消費効率のさらなる改善を目指し、省エネに徹底して取り組むことが必要」と述べている。

エネルギーの安定供給に関しては、太陽光・風力、揚水式水力、石油火力、天然ガス・LPガス、石炭火力、原子力、一般水力、地熱の各電源の特性を整理。「S+3E」(安全性、安定供給、経済性、環境保全)の観点から、エネルギー資源の多様性を確保してバランスよく組み合わせる「エネルギーミックス」の重要性を説いている。原子力については、「燃料調達の安定性、経済性に優れており、ベース供給力として活用できる」と評価。世界の動向、福島第一原子力発電所事故を踏まえた新規制基準、核燃料サイクル、放射性廃棄物の処理・処分のあらましとともに、放射線の基礎知識も紹介している。

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