加NBパワー社 SMRのサイト準備許可を申請
05 Jul 2023
ARC社製SMR発電所の完成予想図 ©ARC Clean Technologoy
カナダ・ニューブランズウィック(NB)州の州営電力であるNBパワー社は6月30日、州内のポイントルプロー原子力発電所内で米ARCクリーン・テクノロジー(ARC)社製の小型モジュール炉(SMR)「ARC-100」を建設するため、ARC社のカナダ法人と協同で「サイト準備許可(LTPS)」の申請書をカナダ原子力安全委員会(CNSC)に提出した。2030年頃に送電開始し、60年にわたって運転していく計画だ。
LTPSの申請は、原子炉の建設と運転に向けたプロジェクトが正式に始動したことを意味している。CNSCはすでに2019年3月、SMR開発プロジェクトとしては初のLTPS申請書をグローバル・ファースト・パワー(GFP)社から受領しており、今回が2例目。GFP社はオンタリオ州のオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社と米ウルトラ・セーフ・ニュークリア社(USNC)が設立した合弁事業体で、同州内のAECLチョークリバー研究所でUSNC社製SMR「マイクロ・モジュラー・リアクター(MMR)」を建設する。
ARC社が開発中の「ARC-100」(電気出力10万~15万kW)は第4世代の先進的SMRで、ナトリウム冷却・プール型の高速中性子炉。同炉の技術は、米エネルギー省(DOE)傘下のアルゴンヌ国立研究所で30年以上運転された「実験増殖炉Ⅱ(EBR-Ⅱ)」で実証済みだ。
NBパワー社は最近公表した戦略計画の中で、州内のエネルギー供給を保証しつつ2030年までに石炭火力発電所を全廃する必要があると指摘しており、2035年までに同州のCO2排出量を実質ゼロにすることを目指している。SMRの導入はこれらの目標達成に向けた重要な解決策の一つと考えられている。
NB州政府とNBパワー社は2018年7月に、第4世代のSMR実証炉をポイントルプロー発電所内で2種類建設するプロジェクトを開始した。世界水準のSMRの開発と製造で同州がリーダー的立場を確立するため、約90件のSMR申請の中からARC社の「ARC-100」と英モルテックス・エナジー社が開発中の「燃料ピン型溶融塩炉(SSR-W)」を選定。NB社が技術面の作業をサポートしながら、これらの実証炉を2030年頃までに建設すると発表しており、この2件の第4世代SMRの建設計画は、NB州などカナダの4州が2022年3月に公表した「SMR開発・建設の共同戦略計画」の中では、3つの開発方向性(ストリーム)における「ストリーム2」に分類されている。
「ARC-100」についてはこのほか、NB州北部のベルドゥーン港湾管理局(BPA)がグリーン・エネルギー・ハブとなることを目指して導入を計画中。アルバータ州でも、外国投資誘致機関のインベスト・アルバータ社(IAC)が今年3月に、州内での建設と商業化に向けてARC社のカナダ法人と覚書を締結している。
(参照資料:ARCクリーン・テクノロジー社、CSNCの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの7月3日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)