気候専門ファンドがスウェーデンのSMR計画に出資
11 Jul 2023
「BWRX-300」発電所完成予想図 ©GEH
スウェーデンで小型モジュール炉(SMR)の建設を計画しているシャーンフル・ネキスト(Kärnfull Next: KNXT)社は7月4日、デンマークのクリメンタム・キャピタル(Climentum Capital)社、およびスウェーデンのグラニトル・グロウス・マネージメント(Granitor Growth Management)社から合計200万ユーロ(約3億1,000万円)の資金供与を受けたと発表した。
SMRプロジェクトの開発企業であるKNXT社は2022年3月、米GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社と了解覚書を締結しており、スウェーデン国内で複数のGEH社製「BWRX-300」(電気出力30万kW)を早期に建設することを目指している。
一方のクリメンタム・キャピタル社は、気候変動の影響を緩和する技術やサービスの提供企業向け専門の投資を行う気候テック・ファンドであり、環境上の持続可能性を備えたグリーン事業への投資基準「EUタクソノミー」においては、規定が最も厳格な「9条ファンド」[1] … Continue readingに認定されている。また、グラニトル・グロウス・マネージメント社は、スウェーデン国内でより良いコミュニティの構築に貢献する技術の開発に投資している。
KNXT社によると、同社のSMR建設事業に対する今回の出資は、欧州の9条ファンドが原子力発電に対して行う最初の出資例となった。2030年代初頭までにスウェーデン初の商業用SMRを稼働させ、地域経済の活性化や雇用の創出を図る方針だ。同社はまた、スウェーデン全土の有望な候補サイト数地点で、SMR建設に係わる権利を確保済みである。
スウェーデンでは今後25年間に無炭素電力の発電量を現在の1,600億kWhから3,600億kWh 以上に拡大することを計画しており、エネルギー庁の最新のシナリオ分析では、経済面や環境面、供給保証面の利点を最大化するには、原子力で総発電量の35~45%を賄う必要がある。
これらのことから、KNXT社は再エネ関係のプロジェクト開発企業と同様に、SMRを通じてあらゆる産業部門の脱炭素化を支援していく。同社のSMR建設計画はEUタクソノミーとスウェーデンのエネルギー需要の両方に合致しているため、送電網に電力を供給するプロジェクトのみならず、輸送部門などCO2の削減が困難な産業部門の脱炭素化も推進する予定である。
今回2社から獲得した資金は、KNXT社が現在実施中の事前調査や実行可能性調査に役立てるほか、スウェーデン国内でSMR建設の新たな候補地点を特定するのに活用する。
(参照資料:シャーンフル・ネキスト社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの6月19日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)
脚注
↑1 | EUタクソノミーにおいて、環境面で持続可能な経済活動に対してのみ投資(サステナブル投資)を行うファンドで、同タクソノミーに適格な投資の割合の開示が義務付けられている。 |
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