ポーランド政府 PEJ社のAP1000建設計画にDIP発給
13 Jul 2023
ルビアトボ-コパリノ地区における原子炉3基の完成予想図 ©PEJ
ポーランドの気候環境省は7月11日、国営エネルギー・グループ(PGE社)の原子力事業会社であるPEJ(=Polskie Elektrownie Jądrowe)社が北部ポモージェ県内で計画している同国初の大型炉建設について、「原則決定(DIP)」を発給した。
これは、原子力発電所の建設計画でポーランド政府が下した最初の主要な行政判断。同県ホチェボ自治体内のルビアトボ–コパリノ地区で、ウェスチングハウス(WH)社製の第3世代+(プラス)のPWR「AP1000」を最大3基建設する計画が、エネルギー政策等の国家政策に則したものであり、国民の利益にも適うと正式に認めた。事業者となるPEJ社は今後、立地点の確定や建設許可の取得など、さらなる行政判断を仰ぎ手続きを進めることが可能になる。ポーランド政府としても、国家のエネルギー供給ミックスがより良い方向に向かい、供給が強化される節目になったと強調している。
ポーランドでは改訂版の「原子力開発計画(PPEJ)」に基づいて、2043年までに国内の複数サイトで最大6基の100万kW級原子炉(合計600万~900万kW)を建設する。最初の3基、合計375万kWをポモージェ県内で建設・運転する場合の環境影響を評価するため、PEJ社は2022年3月にルビアトボ–コパリノ地区のほか、近隣のクロコバとグニエビノの両自治体が管轄するジャルニビエツ地区でも影響分析を実施。政府は同年11月、最初に建設する3基の採用炉型としてWH社製のAP1000を閣議決定した。
PEJ社は今年4月に提出したDIP申請書で、このような建設計画の概要を明記。最大設備容量のほかに、2026年に初号機を着工して2033年の完成を目指す等の建設スケジュールや、採用されたAP1000技術の詳細等の記載もあった。
政府の戦略的エネルギー・インフラ大使を兼任するA.ルカシェフスカ–チェジャコフスカ首相府担当相は、「国内のエネルギー供給を強化しながらポーランド政府は脱炭素社会への転換を進めており、原子力開発計画はそのために同時進行している数多くのプロジェクトの一つだ」と説明。「今回のDIPの決定により、ポーランドは初の原子力発電所の実現に近づいており、将来の発電システムの基盤として適切な発電量を確保できるようになる」と強調している。
ポーランドではこのほか、鉱業大手のKGHM銅採掘会社が米ニュースケール・パワー社の小型モジュール炉(SMR)を、また化学・石油合弁企業のオーレン・シントス・グリーン・エナジー(OSGE)社が米GE日立・ニュクリアエナジー社のSMR「BWRX-300」を国内で建設すべく、今年4月にDIPを気候環境省にそれぞれ申請した。また、同国中央部のポントヌフでは、韓国水力・原子力会社(KHNP)が韓国製「改良型加圧水型炉(APR1400)」(出力140万kW)の建設を目指しており、国有資産省(MOSA)が一部出資するエネルギー企業のZE PAK社は今年3月、PGE社と合弁の特別プロジェクト企業を設立する方向で予備的合意に達している。
(参照資料:ポーランド政府、PEJ社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの7月12日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)