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スロバキア WH社製原子炉の建設可能性模索で覚書

18 Jul 2023

両社の覚書調印式 ©Westinghouse Electric

スロバキアの国営バックエンド企業であるヤビス(JAVYS)社は717日、国内で米ウェスチングハウス(WH)社製の第3世代+(プラス)PWRAP1000や小型モジュール炉(SMRAP300を建設する可能性を探るため、同社と2件の了解覚書(MOU)を締結した。

スロバキアでは現在、WH社製原子炉を導入して国内の原子力発電設備容量を拡大できるか評価中。1件目のMOUで技術面やビジネス関係の詳細協力の枠組みを設定し、もう一件では、これらの原子炉の将来的な建設プロジェクト実施に向けた道筋を模索する。

経済省が100%出資するヤビス社は、スロバキアで放射性廃棄物の管理を担当するほか、原子力施設の廃止措置のみならず増設と運転にも責任を負っている。同社はボフニチェ原子力発電所(ロシア型PWR×2基、出力各50kW34号機のみ稼働中)で将来的に5号機を増設するため、2009年にチェコ電力(CEZ社)との共同出資で建設および運転を担当するJESS社を設置。その際、ヤビス社が51%を出資した。ヤビス社はJESS社の親会社としてスロバキアの国益のため、利用可能な原子炉をすべて評価し、スロバキア政府が新たな原子炉の炉型や出力、立地点を最終決定するに当たり、選択肢を提示することになっている。

今回の覚書で、ヤビス社は特にSMR建設プロジェクトの実施を念頭に置いており、このような新技術に関する情報をWH社と幅広く交換し、スロバキアのエネルギー供給網に加えられるかの適性を精査する。100kW級のAP1000の出力縮小版となるAP300(出力30kW)について、同社はWH社から「AP1000と同じ実証済みの技術を採用しているため、同様の許認可手続きが適用され、サプライチェーンも同じものが利用可能。同じく受動的安全系や負荷追従運転の能力も備えている」と説明されており、その建設と運転・メンテナンスを通して両設計の間でかなりの相乗効果が期待できると考えている。

WH社は今年5月にAP300を発表。今回新たに、2027年までに米原子力規制委員会(NRC)から設計認証(DC)を取得し2030年までに初号機の建設を開始、2033年までに運転開始するとの見通しを明らかにした。

WH社との協力について、ヤビス社のP.シュトレル会長兼CEOは、「ボフニチェ原子力発電所12号機の廃止措置など、WH社とは以前から長期的な協力関係にある」と指摘。これに加えて、WH社はスロバキアで稼働するロシア製原子炉向けに新燃料を提供するなど、燃料の調達先多様化にも貢献している。

在スロバキア米大使館のG.ラナ大使は、「2件の了解覚書を通じて両国の企業が民生用原子力部門で商業レベルの協力を一層緊密にする基盤が築かれた」と歓迎している。

(参照資料:WHヤビス社(スロバキア語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNA717日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

 

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