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WH社 英政府補助金で燃料工場を拡張へ

31 Jul 2023

イングランド北西部ランカシャー州スプリングフィールドにあるWH社の燃料製造工場 ©Westinghouse Electric

米ウェスチングハウス(WH)社は727日、英国スプリングフィールドにある同社の原子燃料製造工場の拡張・アップグレード用として、英国政府の「原子燃料基金(NFF)」の中から総額1,050万ポンド(約191,200万円)の補助金を獲得したと発表した。2025年3月末までに交付される見通しだ。

WH社はこの補助金を次世代原子炉関係の3つの用途に使用する予定で、まず第3世代+(プラス)の同社製PWRであるAP1000、およびその出力縮小版のAP300など、様々な軽水炉に使用する原子燃料を同工場で製造。英原子力産業界が将来にわたって、最新の燃料を供給できるようにする。

また、英国での新規炉開発に備え、WH社は同工場でのHALEU燃料[1]U235の濃縮度が520%の低濃縮ウランの製造検討に補助金を活用する。同社はさらに、カナダのテレストリアル・エナジー社および英国立原子力研究所(NNL)との協力に基づき、テレストリアル社製の小型モジュール式・一体型熔融塩炉(IMSR)に使用する4フッ化濃縮ウラン(UF4)燃料と熔融塩燃料の試験製造にも補助金を活用する方針だ。

NFFは20227月、英国内の原子力部門で高度なスキルを要する雇用を維持しつつ新たな原子力インフラへの投資を促進するため、ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)(当時)が発電用原子燃料の国内製造拡大を目的に、7,500万ポンド(約1365,700万円)の予算で設置した。これは、2050年までに国内の民生用原子力発電設備を2,400kWまで拡大(現在は653.4kW)して、英国のエネルギー供給を保証するには、しっかりとした燃料サプライチェーンを国内で確保・維持することが重要との認識に基づいている。

英国政府はすでに202212月、NFF7,500万ポンドのうち最大1,300万ポンド(約236,700万円)をWH社のスプリングフィールド・サイトに提供すると決定した。英国内で稼働する既存のガス冷却炉(AGR)用として、回収ウランと新たに採掘されたウランの両方を転換する能力の開発を目的としたもの。これにより、現時点でロシア以外の国では不可能な回収ウランの転換を可能にし、国際社会がロシアの燃料供給から脱却することを目指している。

今年1月には、英国政府はNFFに残っている約5,000万ポンド(約91億円)の中から、資金提供するプロジェクトの競争入札を開始した。ここでの目的は、SMRを含む軽水炉用として英国産の燃料サプライチェーンを新たに構築するとともに、2030年代以降に運転開始が見込まれる先進的モジュール炉(AMR)用のHALEU燃料など、新しいタイプの燃料製造プロジェクトを支援すること。BEISのエネルギー政策を今年2月に引き継いだエネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)は718日、国産燃料のサプライチェーン構築を支援する国内8つのプロジェクトに対し、今回総額2,230万ポンド(約406,200万円)の補助金をNFFから拠出するすると発表した。

WH社の燃料製造工場に交付する1,050万ポンド以外では、カーペンハーストにあるURENCO社のウラン濃縮工場に950万ポンド(約173,000万円)を拠出し、低濃縮ウランおよびHALEU燃料の製造を支援。また、AMRの一つである熔融塩炉の国内開発企業であるモルテックスFLEX社に120万ポンド(約21,800万円)以上を交付し、バーナー・リグなど熔融塩の製造に必要な機器の製造と運転を支援するとしている。

(参照資料:WH、英国政府の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNA727日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

脚注

脚注
1 U235の濃縮度が520%の低濃縮ウラン

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