原子力産業新聞

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2022年度原子力白書 研究開発・イノベーションを特集

31 Jul 2023

内閣府原子力委員会は7月27日、2022年度版原子力白書を取りまとめた。

 今回の白書では、「原子力に関する研究開発・イノベーションの動向」を特集。その中で、

  1. 安全性向上と脱炭素推進を兼ね備えた革新炉の開発
  2. 水素発生を抑制する事故耐性燃料の開発
  3. 原子炉の長期利用に向けた経年劣化評価手法の開発
  4. 高線量を克服する廃炉に向けた技術開発
  5. 核変換による使用済燃料の有害度低減への挑戦
  6. 経済・社会活動を支える放射線による内部透視技術開発
  7. 原子力利用に関する社会科学の側面からの研究

――の7つのトピックを取り上げ、国内外における研究開発の動向、課題、将来展望について紹介している。

革新炉開発では、小型軽水炉、高温ガス炉、ナトリウム冷却型高速炉を取り上げ、炉型ごとの安全性向上技術について紹介。例えば、米国で開発が進められる小型軽水炉「VOYGR」では、自然災害や航空機衝突など、外部ハザードへの耐性を強化するため、プラントを半地下に設置し、原子炉と格納容器から構成されるモジュールを大きな地下プール内に設置。万一事故が起きても、プール内の水で炉心が冷却され、水が蒸発しても空冷で「自然に冷える」設計となっている。

高温ガス炉、ナトリウム冷却型高速炉についても、外部からの電源や動力が無くなるような非常時に、炉心や格納容器を冷却できる受動的安全機能の開発がそれぞれ進められている。

さらに、炉型を問わず、特に、地震の多い日本に設置する原子炉に必要な安全性向上対策として、3次元免震装置を紹介。これまでの水平方向の揺れに加え、上下方向の揺れを減衰する技術を組み合わせた構造で、設置・メンテナンスが容易となる。

一方で、万一、事故が施設内で収束しなかった場合の影響緩和に資する技術開発に加え、緊急時対応の検討も合わせて進めるよう指摘している。

2023年2月に原子力委員会がおよそ5年半ぶりに改定した「原子力利用に関する基本的考え方」では、国が研究開発を支援するに当たり、将来の実用化を見据えること、技術の客観的評価の重要性などがあげられた。今回、原子力白書の特集に関しては、原子力委員会メッセージ「研究開発に当たって求められる態度」として、

  • 研究のための研究とならないよう、技術のメリットを強調するだけでなく、社会実装に向けて、科学的・工学的な課題を含めた技術の客観的な検証を進めていくべき
  • 社会実装の早期実現のため、放射性廃棄物対策、事業段階でのサプライチェーン、規制対応、経済性など、事業全体のライフサイクルに対する影響を早い段階から議論の俎上に載せるべき
  • 効果的・効率的な研究開発を促進するため、事業を担う産業界の主体性を活かす産学連携や国際連携を積極的に進めることが必要

――と強調している。

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