原子力産業新聞

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原子力機構 ナトリウム冷却高速炉の設計最適化に向け新手法

04 Aug 2023

ARKADIAによりナトリウム冷却高速炉の最適な設計条件を探索した例(原子力機構発表資料より引用)

日本原子力研究開発機構は8月2日、ナトリウム冷却高速炉の安全性を評価し設計最適化を図る新しいシミュレーション手法を開発したと発表した。同機構が開発を進めている革新的な原子炉の実用化を支援する統合システム「ARKADIA」(Advanced Reactor Knowledge and AI-aided Design Integration Approach through the whole plant lifecycle)の一環となるもの。今回、ナトリウム漏えいを想定したシミュレーションを行い、安全性確保と格納容器の小型化を両立する最適な設計条件を見つけることに成功した。〈原子力機構 こちら

原子力機構高速炉サイクル研究開発センターが開発した新しいシミュレーション手法は、原子炉容器の内部から、冷却系配管、格納容器に至る広い領域で、相互の影響を自動的に考慮できるのがポイント。それにより、無限の組合せが考えられる設計条件から、安全性と経済性の両者を高い水準で満たす最適な設計を選び出し、開発リソースの最小化を図る。

「ARKADIA」で機器設計の最適化を目指すナトリウム冷却高速炉は、受動的安全性(自然に止まる・冷える・確実に閉じ込める)、高レベル放射性廃棄物の減容化・有害度低減、多様な熱利用の利点から将来の実用化が期待されているが、化学的に活性な金属ナトリウムの取扱いが一つの課題だ。同研究開発センターでは、新しいシミュレーション手法の有効性を確認するため、「原子炉の配管を流れる液体ナトリウムが漏えいし、燃焼したことで、広い範囲で圧力が上昇する」という事故を想定。配管からのナトリウム漏えい量、格納容器の内部圧力を評価し、高い安全性を保ちつつ格納容器の大きさを半分に小型化できる最適な設計条件を発見した。格納容器の小型化は、経済性の向上、耐震性の向上、建設工程の短縮、メンテナンスの簡素化など、多くの利点につながる。

同日、記者発表を行った高速炉サイクル研究開発センター高速炉解析評価技術開発部の内堀昭寛氏は、原子炉の設計プロセスを変革する「ARKADIA」の今後の展開に向け、「先ずはターゲットとしているのは高速炉だが、炉型にかかわらず応用できるようさらに開発を進めていきたい」と、抱負を述べた。

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