原子力産業新聞

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東北大・ミシガン大 廃止措置でWS開催

07 Aug 2023

東北大学と米国ミシガン大学が共催する原子力発電所の廃止措置に関するオンラインワークショップが8月4日(日本時間)に開催された。元米国原子力規制委員会(NRC)委員長のクリスティン・スビニッキ氏をモデレーターに迎え、両国の行政機関、規制機関、産業界の実務レベルによるパネルディスカッションを通じ、今後、国内で本格化する通常炉の廃止措置が安全・円滑に進捗するための方策を見出すのがねらい。

開会に際し、東北大大学院工学研究科の渡邉豊教授は、「米国では既に10基を超える発電炉の廃炉が完了している。その成功事例とともに失敗の経験も学ぶ機会としたい」と、今回WSの意義を述べたほか、両国の学生参加者らに対し「20年後には社会を牽引するリーダーとなる」と、将来の活躍に期待を寄せた。また、ミシガン大原子核工学・放射線科学科のトッド・アレン教授は、原子力発電の有する「クリーンエネルギー」としての価値をあらためて強調。原子力発電所の廃止措置に関し、「成功裏での完遂は社会の信頼を得る上で欠かすことができず、将来のプラント設計に資するとともに、若手が活躍する場の選択肢ともなる」と述べた。

両国の廃止措置の現状については、米国電力研究所(EPRI)と電気事業連合会がそれぞれ説明。EPRIからは現在、米国で進行中の12の廃止措置プロジェクトについて、電事連からは中部電力浜岡1・2号機を例に低レベル放射性廃棄物処分の課題やクリアランス[1]放射能濃度が基準値以下であることが確認されたものを再利用または一般の産業廃棄物として処分できる制度対象物の再利用に係る取組などが紹介された。

パネルディスカッションでは、原子力発電分野で40年以上の経験を有する専門家としてディアブロキャニオン発電所のアル・ベイツ氏が登壇。同氏は、「廃炉は極めて長期にわたるプロジェクト」と強調し、早い段階でのリスク認識、規制側とのパートナーシップ構築を図る必要性を指摘した。スビニッキ氏が日本の廃炉に係るスケジュール感について尋ねたのに対し、原子力規制庁で放射性廃棄物のリスク評価研究に従事する大塚楓氏は、日本では廃止措置の経験が少ないほか、福島第一原子力発電所事故の経験から慎重な判断が求められ、審査に時間を要している現状を説明。また、資源エネルギー庁の安良岡悟氏は、クリアランス制度の必要性に関し、日本の廃棄物処分に係る土地制約や地元理解の難しさにも言及した上で、今後も廃炉に資する知見を謙虚に蓄積していく姿勢を示した。この他、廃炉技術の研究開発、国際機関との連携、アカデミアの考え方と産業界のニーズとのギャップ、若手へのインセンティブ喚起などをめぐり意見が交わされた。

脚注

脚注
1 放射能濃度が基準値以下であることが確認されたものを再利用または一般の産業廃棄物として処分できる制度

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