スロバキア SMRや大型炉の新設に向け仏とも協力
04 Sep 2023
FCAに調印する両社の幹部 ©JAVYS
スロバキアの国営バックエンド企業であるヤビス(JAVIS)社は8月25日、国内でフランス製の大型炉や小型モジュール炉(SMR)の建設が決定した場合に、フランス電力(EDF)との協力の基盤となる「枠組み協力協定(FCA)」を同社と締結した。
仏フラマトム社が中心となって開発した欧州加圧水型炉(EPR)や、EDFが原子力・代替エネルギー庁(CEA)等と協力して開発中のSMR「NUWARD」など、フランス製原子炉の建設可能性について技術面や商業面の協議を詳細に行った結果、ヤビス社は原子力分野におけるEDFとの協力の中でも、新設プロジェクト関係に一層力を入れると決定。FCAへの調印は、スロバキアのP.ドフン経済相がフランスを公式訪問したのに合わせてパリで行われた。
このFCAは独占的な協力合意ではなく、ヤビス社は今年7月、米ウェスチングハウス(WH)社製PWRであるAP1000(出力100万kW級)や、その出力縮小版となるAP300(出力30万kW)を国内で建設する可能性を探るため、WH社と了解覚書を締結している。
ヤビス社はスロバキアの経済省が100%出資しており、同国の放射性廃棄物を管理するだけでなく、原子力発電所の廃止措置や増設と運転にも責任を負っている。2009年に同社はチェコ電力(CEZ社)との共同出資により、国内で稼働している原子力発電所の一つで原子炉の新設と運転を担当するJESS社を創設。同社に51%出資する親会社として、ヤビス社はあらゆる炉型を評価し、政府に候補炉型を提示することになっている。
今回のFCAを締結した理由としてヤビス社は、新たな原子炉技術に関する情報交換をさらに緊密に行い、それらがスロバキアの国内送電網に適しているか評価するためだと説明。政府が新たに建設する原子炉の炉型や立地点を決定した際、同社は建設に向けたプロセスの管理責任を負うとしている。
大型炉の候補炉型であるEPRは、出力165万kWのPWRだが、EDFがスロバキアに提案しているのは120万kW版の「EPR1200」。EDFによると、その安全性や運転効率は通常版と同等であり、国際原子力機関(IAEA)と西欧原子力規制者協会(WENRA)、および仏原子力安全規制当局(ASN)の安全要件や運転要件をクリアしている。また、福島第一原子力発電所事故後のストレス・テストをパスした原子炉であるほか、これまでに建設されたEPRやフランス国内で稼働中のPWRの教訓やフィードバックが反映されている。
また「NUWARD」は、同じくEDFが手掛けるPWRをベースとしたSMR。出力17万kWの小型PWR×2基で構成される「NUWARD」プラントの合計出力は34万kWとなる。EDFの説明では、「EPR1200」と同じくIAEAとWENRAが要求する高い安全基準を満たしており、建設工事の容易さや運転面の競争力、環境上の持続可能性等に一層配慮した炉型である。
EDFで新設原子力プロジェクトを担当するV.ラマニ上級副社長は、「スロバキアの原子力産業界など欧州のサプライチェーンを全面的に活用して、欧州の技術に基づいた原子力発電所の建設を欧州で進めることは当社目標の一つ。これを遂行していく上で、今回の合意は極めて重要なステップになった」と強調している。
(参照資料:JAVYS社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月31日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)