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米GE社 SMR活用CO2回収で補助金獲得

05 Sep 2023

ニスカユナ研究施設のスタッフたち ©GE

米国のGE社は829日、傘下のGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社が開発した小型モジュール炉(SMR)を使って、大気からCO2を直接回収する(DAC)システムの地域ハブを国内に設置するプログラムで、米エネルギー省(DOE)から約255万ドルの補助金を獲得したと発表した。

GE社では、電力・エネルギー事業を統合したGEベルノバ社[1]2024年初頭に上場企業として独立・分社化が予定されているが原子力発電と再生可能エネルギーを活用したDACシステムの開発をテキサス州のヒューストン近郊で進めており、同地で予備的な実行可能性調査の実施を計画中。同調査にかかる約332万ドルのうち約255万ドルをDOE2年間で拠出し、年間100万トンのCO2を大気中から回収して地下に貯蔵、あるいは「持続可能な航空燃料(SAF)」の原料等に活用できるか調査する。GE社は今後、同調査の実施範囲や条件を決定するため、DOEと詳細を詰める予定である。

DOEは202111月に成立した「超党派のインフラ投資法」に基づくプログラムの一つとして、商業規模のDACシステム開発とその地域ハブ開発を推進している。2050年までに年間4億トン~18億トンのCO2を大気中から回収するため、811日にはテキサス州とルイジアナ州で計画されている商業規模のDACシステム開発計画に、「DAC地域ハブ開発プログラム」の予算から最大12億ドルを拠出すると決定した。今回はDAC地域ハブ開発の実行可能性と、同ハブの構造設計に関するプロジェクトを19件選定。この中にGEベルノバ社の予備的実行可能性調査プロジェクトが含まれていた。

一方、GE社は今年3月、ニューヨーク州ニスカユナにあるGEベルノバ社の研究施設で、DACシステムのプロトタイプ実証が成功したと発表。今回、GEベルノバ社がDOEの補助金交付対象に選定されたことでDACシステムの開発が加速され、2020年代の終わりまでに商業規模のシステムを完成するという目標を達成できると考えている。この調査でGEベルノバ社は具体的に、DACシステムをGEH社製SMRの「BWRX-300」や再生可能エネルギー源と統合可能か調査するが、同社としては、「BWRX-300」の生産する熱や電力を活用することで、低コストで大気中からCO2回収が可能だと強調している。

GEベルノバ社はこのほか、同じくDOEの「DAC地域ハブ開発プログラム」で補助金交付先に選定されたイリノイ大学主導の2つのプロジェクトにも、DACシステムの供給者として協力する。同プログラムではまた、イリノイ州のノースウエスタン大学が主導する「原子力を活用した中西部地域のDACハブ開発プロジェクト」も、補助金の交付先の一つに選定されている。同地域は米国でも2番目にCO2排出量が多く、原子力を中心に据えたプロジェクトにDOEは総費用393万ドルのうち300万ドルを拠出している。

(参照資料:GEDOEの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNA831日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

脚注

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1 2024年初頭に上場企業として独立・分社化が予定されている

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