UAEとポーランド企業 欧州全域でのSMR建設に向け協力合意
13 Sep 2023
ENEC社とOSGE社の協力覚書調印式© Orlen Synthos Green Energy
アラブ首長国連邦(UAE)で初の原子力発電所を建設・運転中の首長国原子力会社(ENEC社)と、ポーランド初の小型モジュール炉(SMR)建設を計画しているオーレン・シントス・グリーン・エナジー(OSGE)社は9月11日、将来的に複数のSMRをポーランドのみならずその他の欧州地域で協力して建設していくため、了解覚書を締結した。建設が比較的容易でクリーンな電力を供給できるSMRへの投資を通じて、欧州のエネルギー部門や産業界の脱炭素化をともに支援。エネルギー・セキュリティと地球温暖化という二つの課題の解決に取り組む考えだ。
ENEC社は2012年7月、北部のアブダビ首長国で韓国製の140万kW級PWR「APR1400」×4基で構成されるバラカ原子力発電所の建設工事を開始。1~3号機はそれぞれ2021年4月と2022年3月、および今年2月から営業運転中で、残る4号機の作業も佳境に入っている。もう一方のOSGE社は、カナダ・オンタリオ州のOPG社がカナダ初のSMRとして、GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製SMR「BWRX-300」の建設準備を進めているのに倣い、同じく「BWRX-300」をポーランドで建設することを計画。今年4月下旬には、候補地として絞り込んだ7地点のうち、6地点での建設計画について「原則決定(DIP)」を政府に申請している。
OSGE社の「BWRX-300」初号機は2030年頃の完成を目標としているが、それ以降同社は、英国や中・東欧地域などその他の欧州大陸でも「BWRX-300」の建設を目指す方針。そのため今回、GEH社のパートナーとしてポーランド国内で同炉の独占使用権を持つOSGE社と、UAEで大型原子力発電所の建設を「スケジュール通り予算内」で進め、運転実績も有するENEC社が協力することになった。加えてENEC社は、「BWRX-300」の建設にファイナンス面での支援も視野に入れるとしている。
協力覚書への調印は、世界原子力協会(WNA)が英国ロンドンで「世界原子力シンポジウム」を開催したのに合わせ、ENEC社のM.アル・ハマディCEOとOSGE社のR.カスプローCEOが実施した。同シンポでENEC社は、WNAと共同で「ネットゼロ原子力(Net Zero Nuclear=NZN)」イニシアチブを立ち上げたと発表。NZNでは、エネルギー・セキュリティの確保とCO2排出量の実質ゼロ化の両立に原子力が果たす多大な貢献を世界中に周知し、原子力開発の世界規模での拡大を目指している。UAEはまた、今年11月に開催される国連気候変動枠組条約締約国会議(COP28)のホスト国を務めることになっている。
ENEC社は、原子力発電所の建設プロジェクトを成功に導くには、適切なパートナーの選定と高度な専門知識やスキルを持つスタッフの活用がカギだと強調。同社がバラカ発電所の建設と運転を通じて蓄積した様々な経験は、OSGE社の構想を支援する重要な要素になる。
同社のM.アル・ハマディCEOは、「クリーン・エネルギー社会への移行とCO2排出量実質ゼロ化の推進で当社が培った知見と経験を共有し、世界中で原子力発電所の建設を加速していくという当社の計画は、覚書の締結により新たなステージに入った」と表明。「SMRの可能性については当社も綿密に検証中であるが、バラカ発電所の建設・運転経験はこのように新しい分野の研究開発や技術革新を大きく進展させるだけでなく、当社が様々な次世代原子炉を新たに建設していく機会になる」と強調した。
OSGE社のカスプローCEOも、「ENEC社は、ポーランドその他で当社の複数の『BWRX-300』建設計画を支えてくれる心強いパートナーだ」と指摘。「SMR開発が原子力の将来に重要な意味を持つことをENEC社は理解しており、この協力によって我々は世界的規模のSMR建設に向けて大きな一歩を踏み出した」としている。
(参照資料:OSGE社(ポーランド語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月12日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)