NUMO「対話の場」実施状況報告 エネ調廃棄物小委
20 Oct 2023
文献調査の法令上規定される今後の流れ(エネ庁発表資料より引用)
高レベル放射性廃棄物の最終処分地選定に向け文献調査が進む寿都町、神恵内村では、現在、地域住民の間で議論を深める「対話の場」が行われている。
原子力発電環境整備機構(NUMO)および、寿都町、神恵内村で第三者の立場からそれぞれ「対話の場」ファシリテーターを務める竹田宜人氏(北海道大学大学院工学研究院客員教授)、大浦宏照氏(「NPO法人 市民と科学技術の仲介者たち」代表理事)は10月13日、総合資源エネルギー調査会の特定放射性廃棄物小委員会(旧放射性廃棄物WG、委員長=髙橋滋・法政大学法学部教授)で報告を行った。〈配布資料は こちら〉
同小委ではまず、資源エネルギー庁が、両町村における文献調査の今後の流れについて説明。技術的観点も踏まえた「文献調査段階における評価の考え方」の取りまとめ状況とともに、NUMOが今後、作成する「文献調査報告書」に関し、縦覧期間・説明会の実施期間を現行の1か月から延長するよう関係規則を改正する方向性が示された。
「対話の場」は、両町村とも2021年4月に始動し、2023年9月までに、寿都町、神恵内村でそれぞれ17、16回開催されている。NUMOでは、その総括に向けて、「地域の多様な声を集めて、地域対話の専門家・有識者の意見を聴き、客観性を確保しつつ、総括作業を進めていく」方針だ。
寿都町で「対話の場」ファシリテーターを務める竹田氏は、これまでを振り返り、まず、「自由に話せる」、「記録する」、「まとめる」、「公開する」ことの重要性を強調。初回、自身が準備したテーブルワークでの意見交換に反論があったため、「意見・質問を付箋に書き模造紙に貼付けてもらい、回答を書いていくという作業を地道に続け、それを公開、発信した」と、工夫を凝らしたプロセスを紹介するともに、地域住民にとって「生活の一部」となるテーマであることから、人権への配慮にも言及した。
また、地層処分に関する勉強会の企画・運営に長く取り組んできた神恵内村の大浦氏は、「予め答えが決まっている場には関わらない」、「答えを誘導するような行為には関わらない」と、10年前から堅持している中立性の方針をあらためて強調。同村における独自の取組として、「対話の場」の生の声を地域住民に発信すべく発行・全戸配布している広報誌「オスコイ通信」を紹介。同氏も意見・疑問を拾い上げてきた効果を振り返り、「『対話の場』のアウトプットは、これまで模造紙に貼られてきた800枚の付箋だ」と述べた。
両ファシリテーターからの報告を受け、社会学の立場から寿楽浩太委員(東京電機大学工学部教授)は、先般、文献調査を受入れない考えを表明した対馬市の事例から、より早い段階からの住民意見反映の仕組みを検討する必要性を指摘。また、織朱實委員(上智大学大学院地球環境学研究科教授)は、英国における理解活動を視察した経験から、「食卓の話題として語れるような土壌作りが必要」と、地層処分を身近な問題として考える必要性を指摘したほか、交付金に関し「金額が足かせになってはいないか」とも述べ、自治体にとって10億円オーダーの高額が調査受入れの圧力となることを懸念した。