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米エネ省 X-エナジー社製マイクロ原子炉の商業化支援で補助金

30 Oct 2023

米国で先進的原子炉と燃料の技術を開発中のX-エナジー社は1025日、同社製の先進的マイクロ原子炉の商業化に向けた支援を得るため、米エネルギー省(DOE)と協力協定を締結した。

同社はすでに、開発中の小型高温ガス炉「Xe-100」(電気出力8kW)の初号機建設や、同炉で使用するHALEU燃料(U235の濃縮度が520%の低濃縮ウラン)の商業規模の製造施設建設に向けて、DOEの様々なプログラムから支援を受けている。DOEの原子力局と結んだ今回の協定では、同社製のマイクロ原子炉を備えた運搬可能なプラントで、0.3kW0.5kWの電力を火力発電との競合価格で発電することを目指し、2024年末までの期間にDOEから総額250万ドルの支援を受けるとしている。

Xe-100」に対しては、DOEはこれまでにエネルギー高等研究計画局(ARPA-E)の「知的原子力資産による発電管理(GEMINA)プログラム」の下で、20205月に600万ドルの補助金交付対象に選定した。GEMINAでは次世代原子力発電所の運用・保守(OM)コストを10分の1に削減し、経済性や柔軟性、効率性を高めることを目指しており、X-エナジー社は発電プラントにおける自動化技術やロボット、遠隔メンテナンスなど、先進的技術の活用に取り組んでいる。

X-エナジー社はまた、202010月にDOEの「先進的原子炉実証プログラム(ARDP)」における初回補助金の交付対象の一つとして選定され、「Xe-100」の実証炉建設に向けた7年間の補助金として総額12億ドルが交付されることになった。その一部は、同炉で使用する3重被覆層・粒子燃料(TRISO燃料)の商業規模の製造施設を、テネシー州オークリッジで建設する計画にも利用される。同社はさらに、DOEの「新型原子炉概念の開発支援計画(ARC)」の下で、20228月に「Xe-100」の基本設計を完了している。

X-エナジー社製のマイクロ高温ガス炉については、国防総省(DOD)の戦略的能力室(SCO)が20203月、遠隔地における軍事作戦用・可搬式マイクロ原子炉の設計・建設・実証を目的とした「プロジェクトPele」の候補炉型の一つとして選定。同プロジェクトでは最終的に、BWXテクノロジーズ(BWXT)社の先進的HTGRで原型炉を建設することになったが、DODは今年9月、候補設計段階にX-エナジー社と結んだ契約の範囲を拡大し、同社製のマイクロ高温ガス炉を民生用にも商業利用できるよう原型炉の設計を進めると発表。既存契約の範囲内で1,749万ドルをX-エナジー社に交付すると表明していた。

X-エナジー社は現在、DOEDODの両方と結んだ補助金契約に基づき、市場で商業的に活用可能な原子炉の開発を同時並行的に進めている。同社の主任エンジニアは「2つの省からサポートを受けて、軍事用と民生用両方のニーズに合わせた設計を低コストで提供していく」とコメント。「プロジェクトPeleにより、送電網が届かない地域でディーゼル発電を代替し、災害時の救助にも使える無炭素電源の建設にまた一歩近づける」と表明している。

(参照資料:X-エナジー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNA1026日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

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