NEAのSMR等の廃棄物管理戦略策定に米EPRIが協力
31 Oct 2023
NEAとEPRIの幹部による協力合意 ©OECD/NEA
OECD/NEA(経済協力開発機構/原子力機関)は10月26日、小型モジュール炉(SMR)や先進的原子炉が排出する放射性廃棄物の管理戦略を統合するため、新たに開始する共同プロジェクト「Joint Project on Waste Integration for Small and Advanced Reactor Designs (WISARD)」で、米国電力研究所(EPRI)と協力することを発表した。
NEAのW.マグウッド事務局長とEPRIのN.ウィルムシャースト上席副理事長が合意したのにともない、EPRIは「WISARD」への最初の資金拠出者になると同時に、SMRや先進的原子炉の持続的な活用に関するNEAの継続的な取り組みも支援。同プロジェクトでは、原子力発電のライフサイクルにおけるすべての分野から専門家を集め、SMRや先進的原子炉などの革新的な発電システムが、同じく革新的な廃棄物管理ソリューションをどのような形で必要とするかを検討していく。NEAは今年から2024年にかけて、同プロジェクトのカバー範囲を決定した後、2024年第3四半期にもプロジェクトを正式に始動。2027年まで3年間継続する計画だ。
NEAの説明によると「WISARD」は、持続可能な原子力発電システムになり得るSMRと先進的原子炉、およびそれらで使用する革新的な原子燃料への、世界的な関心の高まりから発足したプロジェクト。「WISARD」の作業プログラムでは具体的に、原子炉の設計や燃料製造等のフロントエンドがバックエンド戦略に及ぼす影響などを探る。
原子炉開発の初期段階から持続可能な廃棄物管理戦略を統合するというもので、SMR等の使用済み燃料や放射性廃棄物に特有の特性に焦点を当てて、前例のない国際的な知識基盤を構築する。その後は同基盤の知見に基づき、次世代の使用済み燃料や放射性廃棄物に対する現在の管理ソリューションの適合性を評価する方針で、 これらの廃棄物に関し、①長期的な処分、②輸送、③処理とリサイクルおよび再処理、④中間貯蔵――の主要トピックに焦点を当てていく。
原子炉の設計等がバックエンドに与える影響を評価することにより、将来的な課題を早期に特定し、原子炉ベンダーや発電事業者、政府機関に、不要なコストをかけずに効率的かつ持続可能な方法で解決策を提供できるとNEAは説明。EPRIは科学者やエンジニア、政府、学術界との協力により、原子炉の設計から閉鎖に至るまで技術革新を推進してきたことから、その広範な経験が「WISARD」に活かされると考えられている。
EPRI はまた、エネルギー部門の広範なニーズを特定することでエネルギーの未来図を描くことを目指している。NEA は次世代原子炉の持続可能性支援に向けて、今後も国際的な規模で追加の協力参加者を募ると表明している。
(参照資料:OECD/NEAの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月27日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)