スウェーデン リングハルス増設に向け地元自治体に計画申請
08 Nov 2023
リングハルス原子力発電所 ©Vattenfall
スウェーデン国営のバッテンフォール社は11月1日、ヴェーロー半島にあるリングハルス原子力発電所(PWR×2基、各約120万kW)の西側に小型モジュール炉(SMR)を少なくとも2基建設するため、詳細計画の策定申請書を地元ヴァールベリ市に提出すると発表した。
同社はすでに同半島で約1km2の土地を確保済みだが、9月からは建設準備に向けて追加分の土地購入手続きを開始。建設の最終投資判断(FID)は、必要な許認可をすべて取得した後に下す予定で、初号機の運転開始は2030年代初頭を目指している。
今回の申請書では、現時点の計画として「運転エリア」に原子炉建屋や補助建屋を建設するほか、「諸活動エリア」で作業工場や貯蔵所、事務スペース、食堂などを設置する青写真を提示。今後はリングハルス発電所の既存インフラを、新規SMRとどの程度共有できるか調査していく。
スウェーデンでは2022年9月の総選挙で中道右派連合の新政権が発足し、同年10月のティード城における政策協議で、環境法に記されている原子力発電関係の禁止事項(新たなサイトでの原子炉建設禁止、同時に運転できる原子炉の基数は10基まで、閉鎖済み原子炉の再稼働禁止)を撤廃すると決定。2040年までにエネルギー供給システムを100%非化石燃料に変更するため、2026年までに合計4,000億クローナ(約5兆5,000億円)の投資を行い、原子炉の建設環境を整えるとした。今年1月には、U.クリステション首相が環境法の改正を提案しており、政府は9月末に同法の改正法案を議会に提出、2024年1月初頭にも同法案が成立・発効することを目指している。
バッテンフォール社は2022年6月から、リングハルス発電所でSMR建設に向けた諸条件の予備調査を始めており、急速な増加が見込まれる電力需要を非化石燃料電源で賄えるか調査中。リングハルス発電所では2020年末までに1、2号機が永久閉鎖されたことから、従来の大型炉やSMRであっても、既存の環境法の規定範囲内でリプレース用原子炉としての建設が可能である。また、送電インフラが整っており新設炉との接続が容易であるなど、同社は複数の理由から建設に適していると判断、この予備調査は年末までに完了する見通しだ。
同社はこのほか、今春から環境影響声明書(EIS)の作成に向けて地盤調査などのフィールドワークを開始。夏以降は、原子炉ベンダーへの要求事項に関する作業も開始したことを明らかにしている。
なお、政府の気候・ビジネス省は11月2日、エネルギー供給システムの100%非化石燃料化に向けて、原子炉建設に関する許認可手続きの迅速化と簡素化に向けた分析調査を開始した。大型炉やSMRの建設加速の条件整備には、規制の枠組みや申請審査等の効率化が欠かせないとの判断によるもの。これにより、安全保障の基本要件でもある盤石なエネルギー供給システムを確保するとしている。
(参照資料:バッテンフォール社の発表資料(スウェーデン語)①、②、スウェーデン政府の発表資料(スウェーデン語)、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月6日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)