原子力産業新聞

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WNU-SI 日本参加者が報告会

10 Nov 2023

今回のWNU-SI参加者(平均年齢34.5歳)で最年少の丸紅・大濱さんの発表模様、ネットワークの構築や知識・経験の習得とともに「自社のアピールにもつながった」と

原子力分野で国際的に活躍する若手のリーダー育成を目的とした「世界原子力大学・夏季研修」(WNU-SI)が、今夏、初めて日本で開催された。〈既報

WNUは、世界原子力協会(WNA)が国際原子力機関(IAEA)、経済協力開発機構原子力機関(OECD/NEA)、世界原子力発電事業者協会(WANO)他の協力によって2003年に設立した国際教育訓練パートナーシップ。2005年以降、毎夏、世界各地で開催するWNU-SIには、これまでに千人を超す研修生が参加している。

今回、日本原子力産業協会の「向坊隆記念国際人材育成事業」による支援を受けた5名を含む、計7名の日本人参加者の報告会が10月18日に行われ、6月25日~7月28日の5週間にわたる研修成果が報告された。

研修プログラムは、各国の原子力産業界や国際機関の現役リーダー・OBらの指導による講義・グループワーク、および施設見学が中心。講義を踏まえ日々与えられるテーマについて10名程度の研修生らで議論し発表し合うグループワークでは、原子力発電を導入しようとする国を想定し、その国の政府や企業の立場から原子力産業のあり方や地域住民への説明内容を発表するという課題もあった。研修に参加した東京電力ホールディングスの滝口剛司さんは、「客観的視点で自国の原子力産業を振り返る契機となった」とするとともに、グループワークで政府広報マンの役として発表した経験から、「まずは『伝えよう』とすること、たとえ初歩的な質問であっても自ら『議論に参加しよう』という姿勢が必要」と、コミュニケーションの重要性を強調した。

また、日立GEニュークリア・エナジーの多田岳史さんは、研修生らとの議論を通じ、「『他のやりかた・言い方がないか?』と常に自問する」姿勢を学んだ一方、「あまり差のない2つの案の間で悩み、議論が止まる」場面に戸惑った経験から、リーダーシップの涵養に向け、適応力と決断力を身に付ける必要性を強調。昨今のAI普及から英語プレゼンにおけるChatGPTの有用性にも言及した。

今回のWNU-SIでは、小型モジュール炉(SMR)や核融合など、革新的原子力技術に係る内容が拡充され、ITER機構主席戦略官の大前敬祥氏も講義。関西電力の的場大輔さんは、「特にアフリカ諸国からはSMR導入への熱い視線を感じた」などと、研修の所感を述べたほか、自身が主な業務とする新型燃料開発に関し、今後、海外の原子力技術者との交流を深めていくことに意欲を示した。

研修プログラムの一環となるテクニカルツアーでは、福島第一・第二原子力発電所などを見学。同施設で通訳を任された東芝エネルギーシステムズの中村勇気さんは、「事故発生当時は学生だった。当事者の視点に立つ貴重な経験となった」と振り返った。

講義・グループワークの放課後を利用し行われた異文化交流では、国ごとにブースを出展し伝統芸能や特産物などを紹介。日本ブースでは、参加国の味覚に応じた日本酒、伊勢銘菓「赤福餅」などが振る舞われ、特に国内でも親しまれているスナック菓子「うまい棒」には絶大な人気が集まったという。会期中、懇親会、スポーツ観戦、ショッピングなどを通じ海外研修生との交流を深めたという日立GEニュークリア・エナジーの皆川祐輔さんは、「文化の違いを実感した」としたほか、コミュニケーション能力に関して「『わからないことを“わからない”と伝える』のに最も苦労した」などと振り返った上で、日本の文化、歴史、政治的考え方をあらためて勉強し直すことを今後の抱負として述べた。

次回のWNU-SIは、2024年6月2日~7月6日にブラジル(リオデジャネイロ)で開催予定。原産協会では11月24日まで、「向坊隆記念国際人材育成事業」による支援対象者を募集している。

*「向坊隆記念国際人材育成事業」の概要、これまでのWNU-SI参加報告、次回WNU-SIの支援対象者募集は、こちら をご覧ください。

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