オランダでのSMR建設計画 3社が合意
14 Nov 2023
協力の基本合意書に調印した3社の幹部 © BAM Infra Netherlands
オランダのULCエナジー社が同国内で進めている英ロールス・ロイスSMR社製小型モジュール炉(SMR)の建設計画に、同国の建設企業BAMインフラ・ネーデルランド社が加わった。
3社はそのための基本合意書に11月7日付で調印しており、ロールス・ロイスSMR社のSMRを標準設計としてオランダで複数基建設し同国のクリーン・エネルギーへの移行を促すなど、長期的に協力していくことを確認した。原子力プロジェクトの開発企業であるULCエナジー社は、2022年8月にオランダ国内でロールス・ロイスSMR社の技術を使用する独占契約を同社と締結。実証済みの技術に基づく最新鋭のモジュール式原子炉の建設を通じて、信頼性の高い安価なエネルギー供給システムを構築することになる。
ロールス・ロイスSMR社は、英ロールス・ロイス社が80%出資する子会社として2021年11月に設立された。同社によると、同社製SMRは既存のPWR技術を活用した出力47万kWのモジュール式SMRで、少なくとも60年間稼働が可能。ベースロード用電源としての役割を果たすほか、不安定な再生可能エネルギーを補い、再エネ電源の設置容量拡大にも貢献できるという。
2022年4月からは、英原子力規制庁(ONR)と環境庁(EA)が同炉について「包括的設計審査(GDA)」を開始している。また、英政府のビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)(当時)は2021年11月、民間部門で行われている投資支援のため、同社に2億1,000万ポンド(約391 億円)を提供すると約束。ロールス・ロイスSMR社はすでに英国内の建設候補地として、閉鎖済みの原子力発電所サイトなど4地点を選定しており、2030年代初頭にもSMR発電所を送電網に接続することを目指している。国外ではポーランドやウクライナ、スウェーデン、フィンランド等での建設に向けて、協力覚書を結んでいる。
BAMインフラ・ネーデルランド社は、欧州の建設大手であるロイヤルBAMグループの傘下企業で、オランダでは150年以上にわたり様々なインフラ設備を建設してきた。ロールス・ロイスSMR社のSMRは、1基でオランダ国内の140万世帯に十分なクリーン・エネルギーを供給できるほか、工場で製造したモジュールを現地で組み立てることで従来の大型炉と比べて工期が短くなり、世界中で幅広く利用が可能と高く評価している。
BAMインフラ・ネーデルランド社のS.デンブランケン商業事業開発理事は今回、「戦略的パートナーとなったロールス・ロイスSMR社、ULCエナジー社とともにクリーン・エネルギーへの移行に向けた長期計画を作成する」と表明。「SMRという強力な解決策を通じて、迅速かつリスクを最小限に抑えながらオランダにイノベーションをもたらし、一層持続可能な国にしたい」と抱負を述べた。
ロールス・ロイスSMR社サプライチェーン・グループのR.エベレット・グループリーダーは、「ロイヤルBAMグループとは英国子会社のBAMナットル社を通じてすでに協力関係にあるので、今回の合意に基づいて事業機会を模索していく」と表明している。
(参照資料:ロールス・ロイスSMR社、BAMインフラ・ネーデルランド社(オランダ語)、ULCエナジー社(オランダ語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月8日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)