スウェーデン 原子力の大幅拡大でロードマップ策定
20 Nov 2023
原子力ロードマップを公表する関係閣僚 ©Swedish Government
スウェーデン政府は11月16日、原子力発電所の新設に向けたロードマップを公表。非化石燃料による電力を競争力のある価格で安定的に確保し、社会の電化にともない必要となる総発電量を25年以内に倍増させるため、遅くとも2035年までに大型炉2基分に相当する原子力発電設備を完成させるほか、2045年までに大型炉で最大10基分の設備を建設するなど、原子力発電の大規模な拡大を目指すとしている。
スウェーデンでは2022年9月の総選挙で中道右派連合の新政権が発足し、同年10月のティード城における政策協議で、環境法に記されている原子力発電関係の禁止事項(新たなサイトでの原子炉建設禁止、同時に運転できる原子炉の基数は10基まで、閉鎖済み原子炉の再稼働禁止)を撤廃すると決定。2040年までにエネルギー供給システムを100%非化石燃料に変更するため、2026年までに最大4,000億クローナ(約5兆5,000億円)の投資を行い、新規原子力発電所の建設環境を整えていくと表明した。今年1月には、U.クリステション首相がその環境法の改正を提案しており、3か月間の意見募集を経て政府は9月末に同法の改正法案を議会に提出、2024年1月初頭にも同法案の成立・発効を目指している。
今回のロードマップについて、気候・企業省のE.ブッシュ・エネルギー産業担当相や雇用省のJ.パーソン労働市場担当相など関係閣僚らは、「原子炉の新設に道を拓く一連の政府決定により、スウェーデンは再び主要な原子力発電国となるための基盤を築き、欧米諸国のクリーン・エネルギーへの移行を強力に後押しする」と説明。CO2排出量を実質ゼロにするには、可能な限り多くのクリーン・エネルギーを必要とするため、新規原子力が担う役割は非常に重要だとした。E.スヴァントソン財務相も、「一般消費者や企業に安定的にエネルギーを供給するには原子炉の新設が必要だ」と指摘。資金調達は政府が担うべきものだと述べた。
今回決定した原子炉建設ロードマップの主要ポイントは以下の4点。
- 政府は原子力発電コーディネーターを設置し、新規建設を促すとともに障害となる条件を取り除く。また、追加対策の必要性を見極めるほか、原子力発電の効率的な拡大に向けてすべての関係者の方向性を明確に定めてこれを進めていく。
- 原子力発電の拡大には長期的な財務リスクがともなうことから、政府はこれまでに4,000億クローナの政府信用保証を導入すると提案しているが、これだけでは不十分。これに加えて、原子力への投資意欲を一層刺激するため、政府とリスクを共有するための資金提供モデルと国の財務責任を明確化する。
- 遅くとも2035年までに、少なくとも合計250万kW以上の原子力発電設備を新たに建設するため、政府はこれまでの措置に加え、今回のロードマップで追加の対策を推し進める。
- 非化石燃料による発電電力の2045年までの長期的な需要を考慮すると、例えば大型炉10基分に相当する設備の拡大が必要になるが、具体的な設備容量と炉型は、電力供給システムの拡大速度や技術開発など様々な要因を見極めて決定する。
これらの政策に基づき政府はすでに今月17日、信用保証供与の準備を整えるよう国債庁に指示している。
(参照資料:スウェーデン政府の発表資料(スウェーデン語)①、②、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月17日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)