UAE 先進炉開発で米英デベロッパーと協力覚書
12 Dec 2023
ENEC社とモルテックスフレックス社の覚書調印 ©MoltexFLEX
アラブ首長国連邦(UAE)で原子力発電プログラムを推進する首長国原子力会社(ENEC社)は12月11日、小型モジュール炉(SMR)やマイクロ原子炉など、先進的な原子炉技術を開発している米英の企業3社と協力覚書を結んだことを明らかにした。
ENEC社はまた、英国のエネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)と、大型炉やSMRの建設等でさらに協力していくための覚書を締結。米エネルギー省(DOE)傘下のアイダホ国立研究所とは、原子力でCO2排出量の実質ゼロ化を目指すためのロードマップを共同開発する方針を明らかにしている。これらはすべて、COP28に併催された「第1回ネットゼロ原子力(NZN)サミット」で締結された。
ENEC社はすでに今月上旬、UAE内でのSMRやマイクロ原子炉導入に向けて、米国のGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社、テラパワー社、およびウェスチングハウス社と相次いで協力覚書を締結した。今回はこれに続いて、米国のX-エナジー社とウルトラ・セーフ・ニュークリア社(USNC社)、および英国のモルテックスフレックス(MoltexFLEX)社との協力覚書に調印した。
ENEC社はCOP28の開幕直前、先進的な原子炉技術で連邦の脱炭素化を加速する「アドバンス・プログラム(ADVANCE Program)」を公表しており、これらの一連の覚書締結はすべて同プログラムに基づいている。
X-エナジー社は第4世代の原子炉設計であるペブルベッド式高温ガス炉(HTGR)「Xe-100」を開発中で、1基あたりの熱出力は最大20万kW、電気出力は8万kW。需要に応じて出力を変動させることが可能という。ENEC社とX-エナジー社はUAE市場における同炉の実行可能性を評価するほか、英国など欧州諸国での建設に向けて協力の可能性を模索。さらには、中東や北アフリカ地域、インド亜大陸における建設も視野に入れている。
ENEC社はまたUSNC社との協力覚書を通じて、同社製の第4世代の小型HTGRである「モジュール式マイクロ原子炉(MMR)」と、同炉を複数基備えたエネルギー供給システムをUAE内で建設する可能性を探る。USNC社によると、MMRとそのたエネルギー供給システムでは1万kW~4.5万kWまでの様々なレベルの熱出力が設定可能で、コスト面の効率性が高いクリーンで安全な熱と電力を場所を選ばずにユーザーに提供できる。両社は同システムでUAEのエネルギー多消費産業の脱炭素化を図り、クリーン水素の製造等に活用するほか、「Xe-100」と同様に中東その他の国々で同システムの建設に向けたサプライチェーンや枠組みの構築を目指す。
英国のモルテックスフレックス社は同じ英国モルテックス・エナジー社の子会社で、2022年から電気出力2.4万kW、熱出力6万kWの「フレックス(FLEX)溶融塩炉」を開発している。ENEC社は、同社との覚書に基づいて共同作業グループを設置し、UAE内で同炉を商業利用する可能性を検証。同炉が生産する低コストで低炭素な電力と熱を水素製造や海水の脱塩も含めた幅広い産業に活用し、低炭素なエネルギー生産社会への移行を促していくとしている。
ENEC社はこのほか、英DESNZと原子力分野でさらなる協力関係を構築するための了解覚書を締結した。エネルギー供給保障とCO2排出量の実質ゼロ化という2つの優先事項を同時並行的に進められるよう、大型炉建設のほかに英国で開発されたSMRなど先進的原子炉技術の設計認証やパイロット建設、および商業炉の建設などで協力を進めていく。ENEC社とDESNZがこれまでの大型炉建設で培った経験を分かち合うとともに、今後建設する原子炉やサイトの選定、建設プロジェクトの資金調達についても協力、効率的な実行に向けて両国が経験した良好事例なども共有するとしている。
(参照資料:USNC社、モルテックスフレックス社、ENEC社の発表資料①、②、③、④、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月11日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)