原子力産業新聞

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エストニア 政府部会がSMR導入を支持

10 Jan 2024

桜井久子

トゥーミング原子力作業部会長 ©Kliimaministeerium

エストニア政府の原子力作業部会は1229日、原子力導入がエストニアの気候変動目標の達成とエネルギー安全保障の向上に役立つと結論づけ、特に小型モジュール炉(SMR)が最適とする報告書をとりまとめた

作業部会は、国際原子力機関(IAEA)の「原子力発電導入にむけたインフラ開発のロードマップ」に従い、SMRの導入の可能性について2年半にわたり分析。原子力は再生可能エネルギーを支援するものであり、タイムリーな計画、十分な資金、政治的・国民大の支持があれば、エストニアにおける原子力導入は可能であるとしている。政府とエストニア議会は、原子力計画について2024年初めの数か月にも議論を開始する予定である。

原子力作業部会の代表であり、気候省のA.トゥーミング次官は、「原子力エネルギーは、エストニアにおいて将来世代にわたって安定したエネルギー供給を保証する可能性を秘めている」としながらも、「原子力を選択することで、再生可能エネルギーの生産・貯蔵能力の強化に影響を与えたり、排出削減を先送りしてはならない」と強調している。

公表された報告書では、原子力の経験のない国で原子力を導入するには何年もの準備が必要であり、原子力計画の実施から発電を開始するには911年のリードタイムを要すると予測。原子力利用を決定した場合、エストニアにおける次のステップは、法的枠組みの整備、人材育成、原子力発電所の建設サイトの選定であるとしている。

また、原子力発電所の建設資金を民間部門から調達し、原子力利用を可能にする枠組みを構築するための国家予算の初期費用は、約7,300万ユーロ(約115.4億円)となるが、原子力エネルギーの導入は、主に税収の増加や経済活動の活性化により国家に安定した歳入をもたらすという。

エストニアの現在の電源は、化石燃料、特にオイルシェール燃料が大半を占めている。エストニアは、2050年までに排出量実質ゼロを達成することを掲げており、国内のオイルシェールの段階的廃止を開始する2035年までにエネルギー・ミックスを多様化するため、信頼性が高く低炭素な電源の選択肢として原子力発電に注目している。報告書では、電気出力40kW以下のSMRの導入が適切とし、小規模なバルト海電力市場、再生可能エネルギー、供給目標、欧州の水素市場の発展の可能性を考慮し、水素製造が可能なSMR34基または合計120kWまでの導入可能性を検討。炉型の選択にあたっては稼働実績と燃料供給の安定性を重視するという。

なお、20232月、エストニアの新興エネルギー企業のフェルミ・エネルギア社は、GE日立・ニュクリアエナジー社のSMRBWRX-300」を2030年代初頭までに建設すると発表している。

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