原子力新年の集い三村会長「新規建設が不可欠」
10 Jan 2024
年頭挨拶に立つ原産協会・三村会長
「原子力新年の集い」(日本原子力産業協会主催)が1月10日、東京プリンスホテル(東京・港区)で開催され、会員企業・組織、国会議員、駐日大使館関係者ら、約700名が参集し親睦を深め合った。
冒頭、年頭挨拶に立った原産協会の三村明夫会長は、まず、元旦に発生した令和6年能登半島地震による犠牲者への哀悼の意を表明。被災地の電力復旧について、北陸電力を中心とした送配電事業者による復旧活動に対し、「安全には十分留意し、多くの被災地に安心の灯を点して欲しい」と述べた。
2023年を振り返り、三村会長は、12月のCOP28(UAE・ドバイ)で、COP史上初めて公式成果文書において、温室効果ガス排出削減の重要な手段として原子力が明記されたことを強調。「原子力が『クリーンエネルギー』としての地位を世界的に確立したことは、われわれ原子力産業界にとって大きな節目であり、社会から原子力が受け入れられる、受容性向上への大きな一歩となった」とした。国内においては、エネルギー安全保障と脱炭素効果を重視した政策の進展として、2023年2月の「GX実現に向けた基本方針」の閣議決定、続く「GX脱炭素電源法」成立など、原子力を最大限活用する方針が明確に示され、「原子力産業界にとって大きな前進であった」と強調。その上で、本年に策定が見込まれる次期エネルギー基本計画に向け、「原子力の位置付けが明確化され、原子力の再興が確かなモメンタムとなる上で、極めて重要」との認識を示した。
また、2024年に見込まれる動きとしては、東日本大震災後、初となるBWRプラントの再稼働をあげた上で、「原子力発電プラントの新規建設が欠かすことのできない大変重要な要素」と指摘。新規建設に関して、将来の技術継承、人材の確保・育成、サプライチェーンの維持に大きく貢献するものと期待を寄せた。この他、六ヶ所再処理工場のしゅん工予定など、核燃料サイクル事業の進展にも言及し、「それぞれの事業の意義について、あらゆる方策を尽くし、広く国民理解の促進に尽力していきたい」との考えを述べた。
続いて、来賓挨拶に立った齋藤健経済産業相はまず、能登半島地震に伴う電力を含むインフラ被害・復旧支援の取組について言及。日本の原子力産業の現状については、「原子炉圧力容器から小さなバルブに至るまで、世界に冠たる技術を有した原子力サプライチェーン、人材を保持していた。しかし、長きにわたる建設機会の喪失で、その基盤が脅かされている」と危惧し、技術基盤や人材確保の維持・強化の必要性を強調。加えて、原子力の必要性に関する国民理解について、「10年かけて勝ち取るものだが、失うのは一瞬だ」と述べ、油断せず取り組んでいくよう訴えかけた。
電気事業連合会の池辺和弘会長は、2023年を振り返り、依然と続く燃料価格の高水準、ウクライナ・中東の政情不安など、世界のエネルギーを取り巻く状況に鑑み、「エネルギーセキュリティはナショナルセキュリティだ」と指摘。2024年に向けては、「新しいステージに向けて歩みを進める年にしたい」とした上で、事業者として、稼働中の原子力発電所の安全・安定運転、BWRを中心とした再稼働、再処理事業を着実に進めていくことの重要性を強調。安定供給とカーボンニュートラルの両立に向けて、「原子力をしっかりと前進させ軌道に乗せていく」と述べた。