原子力産業新聞

海外NEWS

加アルバータ州へのSMR導入 電力2社が提携

19 Jan 2024

桜井久子

提携発表式典。発表者(写真左)はキャピタル・
パワー社のデイCEO  X/©Capital Power

カナダのキャピタル・パワー社とオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社は115日、電気出力30kWの小型モジュール炉(SMR)「BWRX-300」のアルバータ州での建設を目指し、協力することで合意した。技術面だけでなく事業運営も含めた実現可能性を検討する。

実現可能性評価は、2年以内に完了するが、その後の取り組みでも協力を継続する。

この合意により、アルバータ州、オンタリオ州、サスカチュワン州、ニューブランズウィック州政府が2022年に発表したSMR導入のための共同戦略計画が前進することになる。

キャピタル・パワー社は、アルバータ州エドモントンに本社を置く、北米の電力会社。アルバータ州、ブリティッシュコロンビア州、オンタリオ州、および米国10州に、火力、太陽光、風力など約760kWの発電設備容量を所有している。

カナダ・オンタリオ州の州営電力であるオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社は、北米初のSMRをオンタリオ州のダーリントン原子力発電所サイト内に建設するため、準備作業を実施している。採用炉型は、GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製のBWRX-300で、計4基建設予定。1基目の建設は2028年末までに完了し、2029年末までに運転を開始する計画だ。

キャピタル・パワー社のA.デイCEOは、「SMRはアルバータ州にとって、安全で信頼性が高く、柔軟性があり、手頃な価格で重要なクリーンなベースロード電源になる。この合意は長期的な戦略的パートナーシップの基礎を築くものである」「30kWSMRは、アルバータ州の電力市場にとって適切なサイズであり、OPG社の原子力発電の経験を活かし、アルバータ州でのSMR導入を加速させる」と期待を寄せる。同社は、2030年から2035年にかけて最初のSMRの設置を目指している。

OPGのK.ハートウィックCEOによると、ダーリントン原子力発電所サイト内での新しいプラントの建設許可取得の規制手続きを完了し、2025年初頭までにSMR4基のコストを公表できるだけの情報が十分に揃うという。初号機は少し高価になるが、後続機はコストが低減されるという。

なお、この提携同意の発表式典には、アルバータ州とオンタリオ州の関係政府機関の大臣も列席。

アルバータ州政府のN.ノイドルフ公共事業担当大臣は、「SMRはクリーンで信頼性が高く、手頃な価格の電力を供給するための適切なエネルギーミックスを求めるアルバータ州にとって、大きな役割を果たす可能性がある」とし、「このパートナーシップは、オンデマンドのベースロード電力を維持しながら脱炭素化を目指す我々にとり、エキサイティングで重要な前進である」と述べた。同大臣は、SMR1か所あるいはそれ以上の場所に設置するかは実現可能性の段階で検討されるが、SMRの魅力は、原子炉をフリート化したり、より離れた場所に単独で設置したりと両方が可能なことだ、と指摘する。

アルバータ州は20239月、同州のオイルサンド事業へのSMR導入に関する複数年にわたる調査に700万カナダドル(約7.7億円)を投資すると発表。アルバータ州政府のB.ジーン・エネルギー鉱物資源大臣は、SMRはクリーンな発電供給ミックスの重要な要素であり、オイルサンド事業にとって有望であると語った。

オンタリオ州政府のT.スミス・エネルギー大臣は、「世界トップクラスのオンタリオ州の原子力の専門知識を活用した次世代のSMR技術の推進を期待する」「SMRは高賃金の雇用を創出する新たな投資を確保し、安全で信頼性の高い電力を供給、地域社会の増大するニーズに対応する」と述べた。折しも、発表式典の2日前、週末のアルバータ州の気温はマイナス45度近くまで下がり、高い電力需要により輪番停電の可能性が発生、住民に節電が要請された。スミス大臣は、アルバータ州の州都エドモントンからソーシャルメディアに投稿。風力発電や太陽光発電がほとんど稼働せず、輪番停電の可能性があることに触れ、オンタリオ州の原子力に関する専門知識をエネルギーの自立と安全保障を求める世界中の地域に輸出していきたい、と発信している。

cooperation