原子力産業新聞

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京大他 数理的手法を用い核融合プラズマの予測技術

29 Jan 2024

石川公一

ヘリカル方式によるプラズマ閉じ込めのイメージ(文科省発表資料より引用)

京都大学他による研究グループは1月26日、核融合科学研究所の大型ヘリカル装置(LHD)で、数理的技術を応用した「データ同化」と呼ばれる新たな予測制御システムを開発し、核融合エネルギーで課題となるプラズマ挙動制御への適用を実証したと発表した。〈発表資料は こちら

ヘリカル型装置は、トカマク型と並ぶ核融合の閉じ込め方式の一つ。ドーナツ状の磁気のかごをつくりプラズマを閉じ込める原理は同じだが、ねじれた「ヘリカルコイル」を用いるのが特徴だ。これまで、名古屋大学を母体とする核融合科学研究所で、国内重点化装置としてLHDの研究開発が進められてきた。

核融合発電の実現には、長時間にわたり1億度を超える超高温プラズマを制御する必要があり、複雑な挙動を予測・制御することが挑戦的課題となっている。研究成果の発表に際し、核融合科学研究所では、「複雑な流動現象に加え、加熱、不純物、中性子など、多くの要素が絡み合う」と、その困難さをあらためて強調。予測の精度を高めるべく、観測される情報を用いて、数値シミュレーションと現実との差異を低減させる数理的手法「データ同化」の開発に取り組んできた。今回、核融合プラズマに向けたシステムとなる「ASTI」(Assimilation System for Toroidal plasma Integrated simulation)とともに、計算機上に再現した仮想プラズマを通して、現実のプラズマを制御する「デジタルツイン制御」を開発。LHDにおいて、その制御能力を実証した。

同システムは、統計数理研究所の協力も得て開発されたもので、道路交通量や河川水位など、様々な社会基盤の制御にも応用が期待できるという。同研究所が取り組む研究分野は極めて広く、科学技術関連の他、古文書分析を通じた史実解明にも及んでいる。

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