英HPCプロジェクト コロナ禍の影響で遅延
31 Jan 2024
ヒンクリー・ポイントC発電所1号機の原子炉建屋へドーム屋根を設置 ©EDF Energy
フランス電力(EDF)は1月23日、傘下の英国法人EDFエナジー社が建設中のヒンクリー・ポイントC原子力発電所(HPC)建設プロジェクトについて、スケジュールの遅延ならびにコストの上昇を発表した。土木工事の資材高騰と電気機械工事の長期化がコスト上昇の主要因であるという。
出力172万kWのEPR×2基から構成されるHPCでは、1号機が2018年12月に着工され、当初、2025年末までの運転開始を予定。2022年2月には、運開時期を2027年6月に修正した上で、総工費は250~260億ポンド(約4.7~4.9兆円)になると予想していた。今回EDFは、さらに運開時期を2030年頃とし、総工費は310~340億ポンド(約5.8~6.4兆円)へと上方修正した。
HPCのS.クルックスCEOは、1月23日に動画によるメッセージを発信。「COVID-19パンデミックにより建設プロジェクトは15か月遅延している。2023年12月に1号機原子炉建屋にドーム屋根を設置したが、予定より2年遅れ。20年間中断していた英国の原子力産業の再開は困難な状態が続いている。新たなサプライチェーンの構築やトレーニングは、今後数十年にわたり恩恵をもたらす非常に大きなタスクであり、他のインフラプロジェクトと同様、土木工事は想定以上に遅れている。COVID-19とブレグジットの混乱に加え、インフレ、労働力不足、資材不足に直面している」と語る。一方で、2号機では同作業のパフォーマンスが20~30%向上すると指摘し、「同一の設計を反復することが成功の鍵」と強調した。
英国原子力産業協会(NIA)のT.グレイトレックスCEOは「建設プロジェクトの期間を空けて一時期に1つの発電所を作るのではなく、多くの発電所を建設すればするほど、より早く、より安価になる。政府の「原子力ロードマップ」で示されるプログラム的アプローチが専門性を高め、労働力を維持し、効率の向上に不可欠である。ヒンクリー・ポイントCは、英国で過去最も重要なグリーンエネルギーのプロジェクトであり、長らく新規の発電所を建設してこなかった原子力産業の復活を象徴する。サプライチェーンを活性化し、その過程で何千人もの熟練工の雇用を創出し、他の産業にも重要な教訓をもたらす」と語る。
なお、英国政府は仏EDF社によるこの発表の前日、イングランドのサフォーク州で計画しているサイズウェルC原子力発電所の建設プロジェクトに対し、今年後半に予想する最終投資判断(FID)が出るまで、サイト周辺の道路や鉄道などの必要なインフラ工事を継続できるように、13億ポンド(約2,431億円)を追加で資金拠出すると発表した。これは、2022年11月の7億ポンド(約1,309億円)と昨年夏に合意された追加5.11億ポンド(約955.6億円)の拠出に続くもの。この段階で政府のさらなる支援を約束することで、プロジェクトはスケジュール通りに進み、全体的なコストを抑えることができるという。