BWRX-300 英国展開で補助金を獲得
05 Feb 2024
BWRX-300の発電所完成予想図 ©GEH
米国のGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社は1月25日、英国における自社の小型モジュール炉(SMR)「BWRX-300」の開発で英エネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)から補助金を獲得したことを明らかにした。英国の包括的設計審査(GDA)フェーズに入る。
補助金総額は3,360万ポンド(約63億円)で、DESNZの「未来の原子力実現基金(Future Nuclear Enabling Fund:FNEF)」から拠出される。「FNEF」は、2022年5月にビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)(当時)が立ち上げた1.2億ポンド(約224.9億円)の補助金交付制度。新規原子力プロジェクトの開発を支援し、原子力産業の競争力強化を目的としている。
英国政府は、2050年までにCO2排出実質ゼロ(ネットゼロ)の達成にむけ、国内の原子力発電設備容量を計2,400万kWとする野心的な目標を掲げている。DESNZのA.ボウイ原子力・ネットワーク担当相は、「SMRはこの急速な原子力復活計画の最前線にある。GEH社への補助金拠出は「BWRX-300」の設計開発を支援するものであり、このSMRの導入により、英国の家庭や事業者はより安く、よりクリーンで、より安全なエネルギーを享受できる」と今回の補助金拠出の意義を強調する。
GEH社は、ジェイコブス社、レイン・オルーク社、キャベンディッシュ・ニュークリア社などの経験豊富な英国チームと、ポーランド最大の化学素材メーカーであるシントス社のグループ企業シントス・グリーン・エナジー(SGE)社とともに、FNEFの申請書をDESNZに提出した。申請した「BWRX-300」の開発プロジェクトにはGDA申請やSMRの商業展開にむけた企業の準備活動などが含まれている。
なお、GEH社は、英国内での「BWRX-300」の建設に備えて、英国最大手の大型鋳鍛造品メーカーであるシェフィールド・フォージマスターズ社と協力の了解覚書を締結するなど、英国のサプライチェーンを開拓している。
DESNZは、GEH社が提出したGDA申請書を事前に精査し、「BWRX-300」がGDA開始前の4つの評価基準をクリアしていることを確認。補助金の拠出に加え、原子力規制庁(ONR)や環境庁(EA)およびウェールズ自然保護機関(NRW)に対し、「BWRX-300」のGDAを開始するよう要請した。
GDAとはONRとEAとNRWが実施するプロセスであり、英国で建設予定の原子力発電プラントについてONRが設計の安全性とセキュリティの観点から、EAとNRWが環境影響の観点から英国の基準を満たしているかを評価する。2021年5月、GDAプロセスはSMRを含む先進的原子力技術に向けて適用されている。
GEH社のJ.ワイルマン社長兼CEOは、「当社の『BWRX-300』は、英国の脱炭素化とエネルギー安全保障の目標にとって理想的な解決策であると確信しており、英国政府がこれを実証するためにこのFNEFから補助金を用意してくれたことに感謝している」と述べ、補助金は英国における強固なサプライチェーンの構築の継続と、規制当局の承諾およびSMR展開に向けた準備加速に役立つだろう、と期待を表明した。
GEH社は、革新的な技術を用いたSMRの開発促進に向けてDESNZが昨年7月に開始した支援対象の選定コンペにも参加。このコンペは、原子力発電所の新設計画を牽引する新しい政府機関「大英原子力(Great British Nuclear:GBN)」が担当し、SMRの開発プロジェクトへの数十億ポンド規模の官民投資の促進を目的とする。GEH社は10月に、フランス電力(EDF)、英国のロールス・ロイスSMR社、米国のニュースケール・パワー社、ウェスチングハウス(WE)社やホルテック・インターナショナルの英国法人とともに、同コンペの次の段階に進むことが決定している。支援対象は2030年代半ばまでに運転開始する可能性が高いものとし、2024年の春に選定、夏までに支援契約を締結する予定である。
昨年12月初旬、ホルテック・インターナショナルの英国法人であるホルテック・ブリテン社は同社のSMR「SMR-300」のGDA審査の開始とともに、FNEFから約3,000万ポンド(約56.2億円)の補助金を授与されている。