ポーランド SMR建設に向けて事前調査作業を開始へ
15 Feb 2024
スタビ・モノフスキエにおけるBWRX-300建設予定サイト(赤枠) ©OSGE
ポーランド環境保護総局(GDOŚ)はこのほど、オーレン・シントス・グリーン・エナジー(OSGE)社に対し、小型モジュール炉(SMR)建設に関して、環境影響評価(EIA)の報告書作成に向けて取り組むべき分野を提示した。これを受け、OSGE社は、米GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社製SMR「BWRX-300」建設に向けて環境・立地調査を開始する。
2023年4月中旬、OSGE社は「BWRX-300」建設に向けて地質調査を実施する7か所の候補地として、北東部のオストロウェンカ(Ostrołęka)とブウォツワベク(Włocławek)、南部のスタビ・モノフスキエ(Stawy Monowskie)、ドンブローヴァ・グルニチャ(Dąbrowa Górnicza)、ノバ・フタ(Nowa Huta)、南東部のタルノブジェク(Tarnobrzeg)特別経済区と首都ワルシャワを選定した。OSGE社は4月下旬、気候環境省にワルシャワを除く6か所における発電所建設に関する原則決定(decision-in-principle=DIP)を申請し、同省は12月上旬、これら発電所に対するDIPを発給した。DIPは原子力発電所建設計画に対する最初の基本的な行政判断で、DIP発給によりプロジェクトが国家のエネルギー政策に則し、国益に適うと正式に認められたことになる。今後、OSGE社は立地点の確定や建設許可の取得など、さらなる行政判断を仰ぎ手続きを進めることが可能になる。
OSGE社は2023年5月、スタビ・モノフスキエ発電所建設に係るEIA報告書作成にあたり、取り組むべき分野を特定する申請をGDOŚに提出した。GDOŚは申請を受け、国境を越えた協議を開始。SMR建設をめぐっては欧州初の協議であり、越境環境影響評価条約(エスポー条約)に基づき、近隣のチェコとスロバキアとの協議を実施した。なお、OSGE社は同年、オストロウェンカとブウォツワベクで計画する発電所についても同様の申請書をGDOŚに提出している。取り組むべき分野は、発電所立地の特殊性を考慮し、個々のプロジェクトごとに決定される。
スタビ・モノフスキエ発電所建設に係る要求事項では、冷却水供給源の特定、原子力安全と放射線防護を確保する具体的な技術の提示、発電所と送電網の連結方法などを取り組むべき主要分野として示している。このGDOŚによる特定を受け、OSGE社は環境と立地の両面から調査を開始する。報告書作成には最大2年を要するとみられている。
OSGE社のR.カスプローCEOは、「EIA報告書作成は、原子力発電所建設に向けた投資プロセスにおいて最も重要な要素であり、最も難しい作業のひとつでもある。このGDOŚの決定により、プロジェクトを想定通りのスケジュールで実施できる」と語る。
「BWRX-300」は、受動的安全システムを備えた電気出力30万kWのBWR型SMRで、2014年に米原子力規制委員会(NRC)から設計認証を受けた第3世代+(プラス)の「ESBWR(高経済性・単純化BWR)」と同じく認可取得済みのGNF2燃料をベースにしている。
2021年12月、GEH社、BWXTカナダ社、ポーランドの大手化学素材メーカーであるシントス社のグループ企業シントス・グリーン・エナジー(SGE)社は、ポーランドにおける「BWRX-300」建設の協力覚書を締結した。同月、SGE社は、ポーランド最大手の石油精製企業であるPKNオーレン社と合弁会社OSGE社を設立した。OSGE社は2022年7月、「BWRX-300」の安全評価について、ポーランドの国家原子力機関(PAA)に予備的許認可手続きの一つである「包括的見解」を求めて申請書を提出。PAAは2023年5月、「BWRX-300」がポーランドの原子力安全基準と放射線防護基準に適合していると公表した。