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米GLEのレーザー濃縮プロジェクトが加速

12 Mar 2024

桜井久子

レーザー濃縮 ©GLE

米グローバル・レーザー・エンリッチメント(GLE)社はこのほど、米国ノースカロナイナ州ウィルミントンにある試験ループ(Test Loop)施設で、レーザー濃縮技術の実証プロジェクトを加速する

GLE社はレーザー濃縮技術の商業化を目指し、豪サイレックス・システムズ社が51%、加カメコ社が49%所有する合弁企業。両者は、2024年の濃縮技術の実証プロジェクト費用について、前年比の倍増で合意した。サイレックス社によると、今年、最大5,450万ドル(約80.2億円)まで増額を承認。GLE社によるサイレックス法(サイレックス社独自のレーザー分子法によるウラン濃縮技術)の実証プロジェクトを年内に完了させ、ケンタッキー州パデューカ・サイトでの用地取得活動や米原子力規制委員会(NRC)の認可取得などの商業化に向けた活動を進め、早ければ2028年にパデューカ・レーザー濃縮施設(PLEF)の営業運転を開始したいとしている。

GLE社はサイレックス法濃縮技術の独占行使権を保有しており、米エネルギー省(DOE)は2016年、GLE社と約30万トンの劣化六フッ化ウランを売却する売買契約を締結、PLEF30年をかけてこれを天然ウラン・グレードまで濃縮し、六フッ化ウラン(UF6)の形で、世界のウラン市場で販売する計画だ。この年生産量はウラン鉱山による八酸化三ウラン(U3O8)の年生産量、最大500万ポンド(1,923tU)に相当し、現在のウラン鉱山の生産量トップ10にランク入りするという。

なお、サイレックス社は、PLEFの以下の3つの商業化オプションを提示している。

  • 劣化ウラン処理による天然ウラン・グレードのUF6(ウラン235濃縮度0.7%)の生産
  • 既存原子炉用の濃縮度5%までの低濃縮ウラン(LEU)、ならびに5%10%までのいわゆるLEU+の生産
  • 次世代の先進的小型モジュール炉(SMR)用の濃縮度20%までのHALEU燃料[1]U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウランの生産

そして、試験ループ施設での実証プロジェクトの成功、産業界と政府の支援、PLEFでの実現可能性評価、市場要因を前提として、サイレックス法による濃縮でGLE社が将来の原子燃料生産に大きく貢献する可能性があるとしている。

なお、DOEが所有するパデューカ・サイトには、パデューカ・ガス拡散濃縮プラントが1960年代から民生用の濃縮ウランを生産していたが、2013年に操業を停止し、現在、サイトは環境復旧プログラム下にある。

脚注

脚注
1 U235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン

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