原子力産業新聞

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韓KHNP、米セントラス社と燃料供給で協力強化

14 Mar 2024

桜井久子

LOI署名式
KHNPのJ.ファンCEO(左)
セントラス・エナジー社のA.ベフラーCEO(右)
©KHNP

韓国水力・原子力会社(KHNP)は226日、燃料の安定供給確保のため、米国のウラン濃縮事業者のセントラス・エナジー社(旧・米国濃縮公社:USEC)と協力意向書(LOI)を締結した。

LOI締結により、KHNPは濃縮ウラン調達先の多様化と燃料供給の安定性向上を目指すとともに、セントラス社との戦略的な関係構築による韓米間の原子力協力を強化することが狙い。KHNPは、「セントラス社との協力で、既存炉だけでなく、将来の新規炉向けの燃料確保も可能になる」と強調している。

2023425日、KHNPはセントラス社と了解覚書(MOU)を締結。ロシアとウクライナの戦争勃発後に大きな懸念となっている持続可能かつ信頼性のあるエネルギーの安定供給への寄与を目的に、事業拡大の機会を模索しながら、安定した燃料供給のための相互協力の強化を狙いとしていた。

現在、韓国では25基が運転中で、いずれもKHNPが運転事業者である。合計出力は約2,500kW、原子力シェアは総発電量のおよそ1/3である。

なお、KHNPは韓国原子力研究院(KAERI)と、小型モジュール炉(SMR)の「i-SMR」(主要機器を原子炉容器内に統合した一体型PWR17kW)の開発を進めている。2025年末までに標準設計(SD)を完了し、2028年に標準設計承認(SDA)の取得をめざす。昨年12月の第28回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP28)の会期中、インドネシアやヨルダンでの「i-SMR」導入にむけて、それぞれインドネシアの電力会社のヌサンタラ・パワー(PLN NP)社、ヨルダン原子力委員会と了解覚書(MOU)を締結するなど、「i-SMR」のグローバル展開に積極的だ。

一方、セントラス社は、米国におけるウラン濃縮能力の再構築に取り組んでおり、昨年11月、国内初のHALEU燃料[1]U235の濃縮度が520%の低濃縮ウラン20kgを製造した。先進的原子炉ではウラン235濃縮度5%20%HALEU燃料使用のものもあり、既存の原子炉よりも小型化し、少ない燃料でより多くの電力の生産や、炉心寿命の延長、安全裕度の増加、効率性向上などが可能になる。現在、ロシアが大規模にHALEUを製造しており、ロシアに依存しない調達先の確保が喫緊の課題となっている。

脚注

脚注
1 U235の濃縮度が520%の低濃縮ウラン

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