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大英原子力 日立からプロジェクト用地買収

22 Mar 2024

桜井久子

©GBN

英国の新規建設の牽引役として昨年7月に発足した政府機関「大英原子力(Great British Nuclear=GBN)」は37日、ウェールズ北部、アングルシー島のウィルヴァ・サイトならびにイングランド南西部、サウスグロスターシャーのオールドベリー・サイトの原子力開発用地を日立製作所から買収したことを明らかにした。用地購入については、J.ハント財務大臣がその発表の前日、議会における年次予算演説の際に購入額1.6億ポンド(約308億円)で合意したと言及している。

英政府は今年初め、エネルギー安全保障を強化し、2050年のCO2排出実質ゼロ(ネットゼロ)へ向けた原子力ロードマップを発表2050年までに国内で合計2,400kWの新規原子力発電所を稼働させ、国内電力需要の4分の1を原子力でまかなうとし、小型モジュール炉(SMR)の導入や、ヒンクリーポイントC、サイズウェルCに続く大型炉プロジェクトの検討も盛り込まれている。購入した2つの用地は、英国が原子力発電設備容量の拡大を目指していることから、新たな原子力発電所の建設サイトとして優先される見通しだ。

デベロッパーで日立製作所の100%子会社であるホライズン・ニュークリア・パワー社は、ウィルヴァ・サイトに英国版の改良型沸騰水型原子炉(UK-ABWR)を2基建設する計画だった。しかし、日立製作所が20209月に建設プロジェクト事業運営からの撤退を表明したことから、20211月、英国の計画検査庁(PI)に提出した開発同意書(DCO)の申請を取り下げた

英国エネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)のA.ボウイ原子力・ネットワーク担当相は、今回のウィルヴァとオールドベリーにおける用地獲得について「英国の原子力復興にとって大きな前進である。原子力産業にとって歴史的な場所であるウィルヴァとオールドベリーに原子力を復活させ、雇用、投資、クリーンエネルギーをもたらす」と語った。

GBNG.ジョーンズCEOも、これらの用地獲得を英国における新たな原子力開発にとって画期的な出来事とし、「ウィルヴァとオールドベリーのサイトは、非常に大きな可能性を秘めており、国にとっても地域社会にとっても大きなチャンス。両サイトは英国の原子力産業を受け入れてきた長い歴史を持ち、原子力発電が地元や地域経済にもたらすメリットを経験してきた。日立のこれまでのサイト準備作業により、これらの用地は非常に魅力的なものとなっている」と述べた。

なお、GBNは同日、SMRの技術選定プロセスの次の段階が開始されたと発表した。入札参加資格のある企業は詳細な入札情報にアクセスでき、今年6月までに応札する必要がある。GBNは、今年後半に落札者を発表することを目標に、事前に入札者の評価作業を行う。その後2つのSMRプロジェクトを選定し、2029年までに最終投資決定(FID)を行う予定だ。昨年10月にSMRの支援対象選定コンペの最終候補者として、フランス電力(EDF)、英ロールス・ロイスSMR社、米ニュースケール・パワー社、GE日立・ニュクリアエナジー・インターナショナル社、ホルテック・ブリテン社、およびウェスチングハウス(WE)社英法人の計6社が選定されている。

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