南ア PBMR開発を再開へ
05 Apr 2024
原子力エネルギー・サミットで発表する南アフリカ政府代表のザサ大使 ©IAEA
南アフリカは3月21日、ブリュッセルで開催された「原子力エネルギー・サミット」で、PBMR開発計画の再開など、同国の原子力開発プロジェクトを明らかにした。
同サミットに出席した南ア政府代表は、ベルギー、ルクセンブルク、EU駐在南アフリカ大使であるT. ザサ氏。同大使は、南ア国民の93%は電力を利用できるが、アフリカ大陸には利用できない人々が約6億人いるとし、「アフリカの貧困、失業、不平等の撲滅には、エネルギー貧困をなくし、エネルギー安全保障の確保が不可欠」と強調した。また、南アフリカは、国のエネルギー・インフラ開発計画である統合資源計画(Integrated Resource Plan: IRP)に従い、予想されるエネルギー需要の伸びを満たし、二酸化炭素排出量を削減するために、原子力、再生可能エネルギー、クリーンコール技術、天然ガスを活用した、エネルギー・ミックスを堅持すると表明した。
また、現在アフリカ大陸で唯一稼動する国営電力会社ESKOM社のクバーグ原子力発電所(PWR、97万kW×2基)が信頼できる手頃な価格の電力を40年間安全運転で供給してきたことに触れ、さらに20年の運転期間延長の見込みであると紹介した。今後の新規建設については、250万kW増強に向けた調達プロセスを開始しており、当初、3月中に予定していた提案依頼書(Request for Proposal: RFP)の発出を年内に実施することを明らかにした。
さらに、アフリカには、クリーンなベースロード電源の原子力発電や医療目的の研究炉を含む様々な原子力用途に必要なウランなど重要な鉱物資源が豊富にあることから、南アフリカはこれらの資源を活用してアフリカの原子力発電所の燃料を生産する一方、戦略的プロジェクトとして、南アフリカ独自のペブルベッド・モジュール型高温ガス炉(PBMR)の開発を再開する意向を示した。また、ペブルベッド燃料の生産実績に基づき、2030年以降に商業展開が予想される多目的原子炉にも続く、高温ガス炉(HTR)燃料の世界的な供給者になることを目指すという。
PBMRは、3重被覆層・燃料粒子(TRISO)燃料を使用し、ヘリウムを冷却材とする小規模高温ガス炉(電気出力16.5万kW、熱出力40万kW)で、750℃の蒸気を供給する蒸気発生器を設置する。炉心溶融の心配が無いなど安全性の高さが特長で、大型炉と比べて初期投資が少なくて済むほか、送電線が本格的に整備されていない地域にも適した原子炉。実績のあるドイツの技術に基づき、ESKOM社が1993年から自国への導入を目的に開発プロジェクトに取り組んできたが、2010年9月、政府は同炉の潜在的顧客や投資パートナーの確保に行き詰まったことや、当時の経済不況によってPBMR開発計画の中止を発表、PBMRは知的財産権保持のため保存整備(C&M)状態にあった。
なお、南アフリカ原子力公社(NECSA)は産業用及び医療用放射性同位元素を世界的に供給しているが、これを支えて60年近く運転されてきた研究炉SAFARI-1の後継となる新型研究炉の事業化調査に取り組んでいることを紹介した。NECSAが想定する多目的原子炉の出力は20〜30MWeで、材料試験やアイソトープ製造用の照射施設やビームライン設備も備える。
ザサ大使は、「原子力の潜在的な経済的利益を享受しながら、エネルギーの自給自足を達成していく。増大するエネルギー需要を効果的に満たしつつ気候変動に対応するためには、エネルギー・ミックスにおける原子力の役割の強化が必要」と結んだ。